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隻眼の俺と開演狼煙
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部屋に戻る途中で、珍しく急いだ様子で廊下を歩いていたガドウとレウィンリィに鉢合わせした。
「どうしたガドウ、そんなに急いで」
「ふはは、騎士団が踏み入れる前に遺跡探索としゃれこむかと思ってな」
だから長いロープを体に巻き付けて歩いてるのか。
普段は大人っぽいレウィンリィも今日ばかりは、目が煌めいているように見えた。
「チェリー、私たちマギアハウンドの目的は分かる?」
「突然だな、魔術の消滅だろう」
「そう、でもその手段は全くなかった。やっとシエロちゃんが見つかった程度」
極彩色の白魔女が持つ《鎮魂歌》によってグロウスは、初めて真の眠りにつくことができる。
「でもね、古代遺跡には太古の昔に反映していた魔法を消滅させた歴史が眠っていると言われてて——もしその謎が解ければ」
「ながい、行くぞレウィンリィ!」
ガドウはレウィンリィの襟首を掴んで、いまだに俺に話しかけている彼女を引っ張っていく。
「あ、ガドウ!」
あぶねえ忘れるところだった。
「悪いが俺たちはすぐにここを旅立つ。戦場になる可能性がある。ありがとうな、ガドウ、温泉誘ってくれて」
「次こそは飲み比べだ。女子供では相手が務まらん」
歩きながらガドウは言って俺に手を挙げてくれた。
人の目玉潰しておいて、憎めないのは面倒見のいいやつだからだろう。だからレウィンリィやシュラクに慕われているのだろう。
「義贋……さん、皆に好かれてるじゃん」
「総司郎でいい、慣れてる。それにイケメンと筋肉は俺の命を取ろうとした奴らだ」
「そういうの悪くないじゃない」
「どんなだよ」
しししと笑って遠野はとことこと歩いていった。
その後、俺たちは起きたシエロと一緒に旅支度を整える。シエロはいつも通り真っ白なお嬢様風の衣装で、遠野はレウィンリィの服をそのまま着ていく運びとなった。どうやら胸がだらしないTシャツとホットパンツは貰っていたらしい。
「総司郎、少しお金貸して」
流石に恥ずかしいと言って、彼女は温泉地に走り、数分後に戻ってきたときは、上に真っ白な白衣を羽織っていた。
「白衣あるじゃんと思って買っちゃった。少しは錬金術師っぽく戻った?」
くるっとその場で一回転し、白衣の中からホットパンツとだらしないTシャツが見える。
いるわ、こういうだらしない格好の白衣の人。まさに、
「マッドサイエンティストにしか見えん」
「女子に言う言葉じゃない」
「シエロとお揃いの色だね、マヤカ」
「ね、白は綺麗で私、嫌いじゃない」
えへへと二人で笑い合い、その間に旅支度を終える。
「クロエ、お前はどうする?」
「私は、ガドウ達と残る……」
表情は薄いもののニコリとほほ笑んで、シエロの手を握る。
「遺跡調査からシエロの手伝いになれたら嬉しいから」
「クロエ!」
シエロは勢い良くがばっとクロエに抱き着く。
いっぱい話したいだろうに、胸が詰まっているのか言葉にならずシエロはずっとクロエを抱いた。クロエはゆっくりとシエロをはなして、おでこを合わせる。
「大丈夫、また会えるからシエロ」
「あ、ありがとう、クロエ」
少しばかり鼻水をすすってシエロは俺のそばに戻ってきた。そして頬を二度軽く叩いて、よし、と声に出す。
「クロエ、気を付けてね!」
「シエロもね」
俺たちは別れを済ませ、新たな古代遺跡が発見されてざわついている街を、人込みをかき分けながら進む。
「本当に離れていいのか、遠野。あの沈んだ街に置き忘れとかないのか」
「ないわ、綺麗さっぱり消えてる。もしかしたら湖の底に何かは残っているかもしれないけど、この時代じゃ引き上げる技術はなさそうね」
「そうか、じゃ次はどの街を目指すか考えないとな」
「シエロ馬車がほしい、大きいの。三人で寝れるやつ」
「悪くないわね、それ」
「じゃ、まずは馬車を——」
と話しかけたところで、耳に切り裂くような音が響き渡る。
「伏せろ!」
俺は咄嗟にシエロと遠野に覆いかぶさり、二人を地面に押し倒した。
「——聞こえる、グロウスの嘆き声が」
シエロが俺の腕の中でハッを追上げる。
先ほどの音は遺跡側ではない。街の入り口付近で煙が上がっている。
「そうじろう、早くみんなを避難させないと」
「私とシエロに任せて。総司郎はグロウスを」
「分かった——何かあれば東の出口で落ち合おう」
「了解」
流石は過去の世界を救った英雄錬金術師だ。
遠野は慣れた動きですぐさま人を誘導し始める。
俺もアトラスに身を包み、上空へと跳躍する。
——そこで見たのは、みたくない光景だった。
トゥリズモスの街を紫色の旗をはためかせた、大多数の人間たちが取り囲んでいた。信じられない量の魔術を放ちながら。
「どうしたガドウ、そんなに急いで」
「ふはは、騎士団が踏み入れる前に遺跡探索としゃれこむかと思ってな」
だから長いロープを体に巻き付けて歩いてるのか。
普段は大人っぽいレウィンリィも今日ばかりは、目が煌めいているように見えた。
「チェリー、私たちマギアハウンドの目的は分かる?」
「突然だな、魔術の消滅だろう」
「そう、でもその手段は全くなかった。やっとシエロちゃんが見つかった程度」
極彩色の白魔女が持つ《鎮魂歌》によってグロウスは、初めて真の眠りにつくことができる。
「でもね、古代遺跡には太古の昔に反映していた魔法を消滅させた歴史が眠っていると言われてて——もしその謎が解ければ」
「ながい、行くぞレウィンリィ!」
ガドウはレウィンリィの襟首を掴んで、いまだに俺に話しかけている彼女を引っ張っていく。
「あ、ガドウ!」
あぶねえ忘れるところだった。
「悪いが俺たちはすぐにここを旅立つ。戦場になる可能性がある。ありがとうな、ガドウ、温泉誘ってくれて」
「次こそは飲み比べだ。女子供では相手が務まらん」
歩きながらガドウは言って俺に手を挙げてくれた。
人の目玉潰しておいて、憎めないのは面倒見のいいやつだからだろう。だからレウィンリィやシュラクに慕われているのだろう。
「義贋……さん、皆に好かれてるじゃん」
「総司郎でいい、慣れてる。それにイケメンと筋肉は俺の命を取ろうとした奴らだ」
「そういうの悪くないじゃない」
「どんなだよ」
しししと笑って遠野はとことこと歩いていった。
その後、俺たちは起きたシエロと一緒に旅支度を整える。シエロはいつも通り真っ白なお嬢様風の衣装で、遠野はレウィンリィの服をそのまま着ていく運びとなった。どうやら胸がだらしないTシャツとホットパンツは貰っていたらしい。
「総司郎、少しお金貸して」
流石に恥ずかしいと言って、彼女は温泉地に走り、数分後に戻ってきたときは、上に真っ白な白衣を羽織っていた。
「白衣あるじゃんと思って買っちゃった。少しは錬金術師っぽく戻った?」
くるっとその場で一回転し、白衣の中からホットパンツとだらしないTシャツが見える。
いるわ、こういうだらしない格好の白衣の人。まさに、
「マッドサイエンティストにしか見えん」
「女子に言う言葉じゃない」
「シエロとお揃いの色だね、マヤカ」
「ね、白は綺麗で私、嫌いじゃない」
えへへと二人で笑い合い、その間に旅支度を終える。
「クロエ、お前はどうする?」
「私は、ガドウ達と残る……」
表情は薄いもののニコリとほほ笑んで、シエロの手を握る。
「遺跡調査からシエロの手伝いになれたら嬉しいから」
「クロエ!」
シエロは勢い良くがばっとクロエに抱き着く。
いっぱい話したいだろうに、胸が詰まっているのか言葉にならずシエロはずっとクロエを抱いた。クロエはゆっくりとシエロをはなして、おでこを合わせる。
「大丈夫、また会えるからシエロ」
「あ、ありがとう、クロエ」
少しばかり鼻水をすすってシエロは俺のそばに戻ってきた。そして頬を二度軽く叩いて、よし、と声に出す。
「クロエ、気を付けてね!」
「シエロもね」
俺たちは別れを済ませ、新たな古代遺跡が発見されてざわついている街を、人込みをかき分けながら進む。
「本当に離れていいのか、遠野。あの沈んだ街に置き忘れとかないのか」
「ないわ、綺麗さっぱり消えてる。もしかしたら湖の底に何かは残っているかもしれないけど、この時代じゃ引き上げる技術はなさそうね」
「そうか、じゃ次はどの街を目指すか考えないとな」
「シエロ馬車がほしい、大きいの。三人で寝れるやつ」
「悪くないわね、それ」
「じゃ、まずは馬車を——」
と話しかけたところで、耳に切り裂くような音が響き渡る。
「伏せろ!」
俺は咄嗟にシエロと遠野に覆いかぶさり、二人を地面に押し倒した。
「——聞こえる、グロウスの嘆き声が」
シエロが俺の腕の中でハッを追上げる。
先ほどの音は遺跡側ではない。街の入り口付近で煙が上がっている。
「そうじろう、早くみんなを避難させないと」
「私とシエロに任せて。総司郎はグロウスを」
「分かった——何かあれば東の出口で落ち合おう」
「了解」
流石は過去の世界を救った英雄錬金術師だ。
遠野は慣れた動きですぐさま人を誘導し始める。
俺もアトラスに身を包み、上空へと跳躍する。
——そこで見たのは、みたくない光景だった。
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