上 下
56 / 70

隻眼の俺と世界を救った錬金術師の目覚め

しおりを挟む

 俺が強く右腕を振ると、三メートルほどある超長距離型ライフルの様な銃が地面に固定される。まるで大砲だが電磁投射砲というらしい。所謂レールガンだ。



「二人とも目と耳を塞いどけ、ビビると思うぜ」



 真上ではなくやや斜めに構える。



「人はいないよな?」



『夜明けほど静かなものはありません』



 砲身がジリリと唸る。



 狙いをつけて引き金を引く。



 対異世界兵器として搭載された特殊レールガンは、雷を周囲にばらまきながら地上目がけて弾丸を打ち出した。



 天井に当たった弾丸はごごごごと鈍い音を立てて、自分の質量よりも大きく天井を削って進んでいく。



「明らかに普通の弾丸じゃねえよな……」



『対異世界兵器としての反物質をテストで打ち出してみました』



「——名前が物騒だから次からは、教えてくれる?」



『承知しました、マスター。つい出来心で』



 まあ何はともあれ、地上への道は開けた。半径三メートルくらいの穴だが、駆け抜けるには丁度いい大きさだ。



「さ、遠野さん」



 俺はアトラスを着たまま背中を向けてしゃがむ。



「べ、別に怖くないんだけどね、安全の面から見て——わちょっと、まって」



 面倒だから無理やり背負う。



 そしてシュラクを開いてる手で担ぐ。



「ま、まって心の準備がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



「いやっほー!」



 お互いに好きなセリフを叫ぶ。ああ、好きに叫べ好きに。



 俺は全力で地面を蹴って地上へと向かう。右足左足右足左足。離れる前に次を踏み込めば理論上落下することもない。



「こわい、すごいこわいこわいこわい!」



「最高だー!」



 朝焼けがぼんやりと見える。



 折角だ全力で飛び出してやろう。



 俺は出口で思いっきり踏み込み、空高く舞い上がった。



 片方がやけに静かな事に気が付いたのは地上に着地してからの事だった。







 宿屋に着くと俺は小一時間ほどシエロに叱られた。



 正座してだぞ、正座して。



 アトラスのままな!



「それで、その女の子は何処の子なの!」



 部屋に到着してもシエロの機嫌は治っていなかった。



 シエロの洋服からレウィンリィさんの、襟首がだらしないTシャツとホットパンツを履かされた遠野も、シエロの姿を見て少しばかり困っている。



「さっきも話した通り、遺跡に眠っていた子みたいでな、それで——」



「人を助けるのは良いことだよ? そうじろうの良いところはそういうとこだと思うの。でもね——心配する人もいるんだよ」



 我慢していた涙を零して、シエロは声を震わせて俺に抱き着いてきた。



「散歩から帰ってこなくて、なにか、あったのかとおもって——」



「シエロ……」



「シエロは寝てない」



 声のしたほうを見ると、目の下にクマを作っているクロエが俺をまっすぐに見ていた。



「悪い……次からは気を付けるから、な」



 滑らかな白髪を優しくなでて、シエロを落ち着かせる。するとシエロはぐずっていたが、段々と静かに呼吸をして、寝てしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...