51 / 70
隻眼の俺と黒靄の残留
しおりを挟む俺たちは更に奥へ進む。
「おおお」
「すげえ……」
完全な開けた場所に出ると、そこは超巨大な円形上のドームになっていた。
俺たちは横穴を抜けて中心地に辿り着いた雰囲気がある。
「なんだあの建物の形……」
シュラクが指をさすと、地下水に沈んだ街が湖の中に見える。そのどれもが縦長で——なんか見慣れている。
「ビル?」
「あん、なんだそのビルってのは」
「ビルっていうのは、長方形に縦長で中に部屋が何百個もあるような奴だ」
「何百個もあるはずねーだろ」
「あの規模ならあるんじゃねーかなあ」
どう見ても六本木ヒルズレベルだ。
目を凝らすと周囲の建物は全てがビル群で、鉄くずは車のようにタイヤが四つついていた形にも見て取れた。
「科学が発展してたのか……」
沈む信号機に剥がれたコンクリートの道路。そこかしこに生える草木。そして黒い影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。影。
水中の中を抵抗もなく歩ていたが同時に同じ動きで俺たちを見上げる。
「げ、見つかった!」
『センサーはこの地中まで反応していたようですね』
俺はアトラスフェイスを落として、状況を確認する。確認するが、留まることをしらないマルチロックオンが響き渡る。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピッ——。
『三千五百六十二名です——それと中央に』
「これ以上聞いても無駄だ、アトラ!」
『対異世界武装、奇術喰いを展開します』
俺を中心に次元を変換する光が展開される。
「シュラクは自分の身を守ってくれ!」
「言われなくても!」
腰のナイフを向いて近くに生まれた影たちを切り裂いていく。口だけではないようだ。心配するのも失礼だろう。
「ほら、お前がやりたがってた焼け野原だ!」
左手を強く振るとアトラスの背中から、多段マルチミサイルが次々と宙に生まれる。
「ファイヤ!」
俺は地面をしっかりと踏んで衝撃に耐える。
ランチャーからは煙を糸のように吐き、次々と飛びかかってくる黒い靄を撃墜する。
次に右手を正面に突き出すとパーツが細かく分かれ、腕の形が次々と変化し、剣のような形をした銃へと生まれ変わる。
「おらあ!」
ビーム兵器のようなその弾丸はマルチロックミサイルで打ち漏らした影を叩き落とす。
「正面を見ろ、義贋総司郎!」
影たちは目にも止まらぬスピードで中心へと集まっていく。
初めは黒い点だったが、黒い球へ、球が巨大な鉄球へ、加速度的に巨大化し、最終的には俺たちを指の一本で潰せそうなほどの人型になる。
「で、でけえ」
シュラクはすぐさま壁際を走り出した。俺も腕に生えた銃を使って遠距離攻撃を試みるが、あまりに大きくて決定打にはならない。
「おいおい、よく見るとキモイじゃねーか」
この黒いの、人間の集まりで出来ている。身体の端々で人の手足が出たり生えたり落ちたり切れたり、しかも何千体もいる全てが手招きをしている。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる