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隻眼の俺と赤髪の純粋の落下点
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くそ、名前くらい考えとくんだった。
こんな時かっこつかないから、何とかマンとか、言えばよかったのか? でもマンってなんかなあ。
いやいや、今はそれどころじゃない。
『マスター、あれは紛れもなく精神残留の塊です』
「どうやらそうらしいな」
シュラクをすぐに見つけたのは、お化けセンサーを起動したからだ。街の至る所にセンサーは反応したが、最も強く反応したのはこの街外れだった。
ファイティングポーズを取りながら、黒い靄を認識する。
のらりと歩きながら、ずっと手招きしている。
「あれはどういうことだ」
『呼んでいるのでしょう』
危ないやつかすら判断できないが、シュラクを飲み込んでいたのは確かだ。対処した方が良い。
「アトラ」
『対異世界武装、奇術喰いを展開します』
アトラが語りだすと俺を中心として、キラキラとした何かが散布される。
『精神次元に存在している概念を物質次元へと無理やり呼び出しています。今なら次元を超えて、愉快にわんぱく可能です』
「わんぱくとはそりゃ結構なこった!」
背中から跳躍力強化用のブースターを展開し、地面を思いっきり蹴り上げて、黒い靄に右ストレートを叩きこむ。
「ぉぉぉぉ」
「手応えがあった!」
フック、ジャブ、ストレート。アトラススーツによる能力強化が義贋総司郎の体を無限へといざなっていく。
「成仏!」
最後の拳を叩きつけようとしたとき、黒い靄は地面に水が吸い込まれるように消え去る。
同時に足元は水よりも抵抗力のない闇へと変化し、俺とシュラクを飲み込んだ。
早い、まさか地面に溶けるなんて。
「シュラクっ!」
俺は彼を抱き込み、そのまま地中深くへと沈んでいった。
潜っていた時間は一分もなかったと思う。
土を抜けると、そこは何かしらの空間が広がっていた。
スッと着地して、シュラクをそっと地面に置く。
「ここは……」
辺りを見回したシュラクは、はっと息をのんだ。
「お前、何者だ、まさか黒甲冑——」
「俺だよ俺」
表情だけ出るようにアトラスフェイスをオープンする。
「げええ、義贋総司郎」
「心底嫌そうにするなって、少年」
若いやつに理由なく毛嫌いされると、おじさんは気付くんだぜ?
「それ付けると声まで変わるのかよ、お前一体何なんだよ」
「通りすがりのサラリーマンでしかないんだが」
「なんでこんな奴にガドウさんが——」
ブツブツと呟きながら、シュラクは辺りを見回す。天井は完全に地面だ。足元は規則正しく人工的に切られた石が敷き詰められている。
こんな時かっこつかないから、何とかマンとか、言えばよかったのか? でもマンってなんかなあ。
いやいや、今はそれどころじゃない。
『マスター、あれは紛れもなく精神残留の塊です』
「どうやらそうらしいな」
シュラクをすぐに見つけたのは、お化けセンサーを起動したからだ。街の至る所にセンサーは反応したが、最も強く反応したのはこの街外れだった。
ファイティングポーズを取りながら、黒い靄を認識する。
のらりと歩きながら、ずっと手招きしている。
「あれはどういうことだ」
『呼んでいるのでしょう』
危ないやつかすら判断できないが、シュラクを飲み込んでいたのは確かだ。対処した方が良い。
「アトラ」
『対異世界武装、奇術喰いを展開します』
アトラが語りだすと俺を中心として、キラキラとした何かが散布される。
『精神次元に存在している概念を物質次元へと無理やり呼び出しています。今なら次元を超えて、愉快にわんぱく可能です』
「わんぱくとはそりゃ結構なこった!」
背中から跳躍力強化用のブースターを展開し、地面を思いっきり蹴り上げて、黒い靄に右ストレートを叩きこむ。
「ぉぉぉぉ」
「手応えがあった!」
フック、ジャブ、ストレート。アトラススーツによる能力強化が義贋総司郎の体を無限へといざなっていく。
「成仏!」
最後の拳を叩きつけようとしたとき、黒い靄は地面に水が吸い込まれるように消え去る。
同時に足元は水よりも抵抗力のない闇へと変化し、俺とシュラクを飲み込んだ。
早い、まさか地面に溶けるなんて。
「シュラクっ!」
俺は彼を抱き込み、そのまま地中深くへと沈んでいった。
潜っていた時間は一分もなかったと思う。
土を抜けると、そこは何かしらの空間が広がっていた。
スッと着地して、シュラクをそっと地面に置く。
「ここは……」
辺りを見回したシュラクは、はっと息をのんだ。
「お前、何者だ、まさか黒甲冑——」
「俺だよ俺」
表情だけ出るようにアトラスフェイスをオープンする。
「げええ、義贋総司郎」
「心底嫌そうにするなって、少年」
若いやつに理由なく毛嫌いされると、おじさんは気付くんだぜ?
「それ付けると声まで変わるのかよ、お前一体何なんだよ」
「通りすがりのサラリーマンでしかないんだが」
「なんでこんな奴にガドウさんが——」
ブツブツと呟きながら、シュラクは辺りを見回す。天井は完全に地面だ。足元は規則正しく人工的に切られた石が敷き詰められている。
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