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隻眼の俺と休息地と減点対象

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「我らマギアハウンドは、魔術狩りを生業とする組織」



「第三聖剣じゃなかったのか」



「十三聖剣とて、ただの人の子。裏の顔はそれぞれあるであろう」



 権力と武力を持ち、裏の顔があるとなると聖剣という組織はどうやら一枚岩ではないらしい。



「ガドウは元々、マギアハウンドの構成員だったってことか?」



「俺は武の頂点を目指すために、聖剣となり国の守護者となった。だが魔術が広がってからは武を極めるための相手も皆剣を置いていった。ならば魔術には消えてもらうしかあるまい」



「我欲での行動か」



「どう捉えてくれても構わん。それと同時に世界の魔術の在り方に疑問を持ったのも確かだからな」



 ガドウは遠い目をして酒を飲み干す。



「魔術の技術争いの為に、平穏に住んでいた民がグロウスとして消費され、騎士団がそれを狩る。グロウスにもランクがあり、何の熱も心に持たない人間ほど低俗なグロウスとなる。そいつらは弱く、魔術量も少ない。だがそれでも安全に狩れるからこそ、ただの人を大量にグロウス化しているのさ」



 自分の手を見てガドウは呟く。



「——昨日まで礼を言ってくれていた飲み屋の親父が、一週間後には俺が首を刎ねる事となった。その感触を思い出したから俺は今ここにいる」



「ガドウ……」



 各国の魔術開発は過熱していると聞く。



 その中で各国に割り振られた聖剣たちだからこそ、生々しい体験をしてきたのがありありと感じられた。



「魔術狩りを歌う組織は幾つかあるが、マギアハウンドはその中でも古く、少数精鋭。それでいて過激派でもない。どうだ小僧」



「どうだ、か」



 俺は顎に手を当て考える。



 正直なところ俺とシエロの足で世界を巡っていては、数でグロウス狩りをしている聖剣たちには追い付けない。シエロの目的が全てのグロウスの鎮魂、魔術消滅にあるのならば悪い話ではない。



「だが組織に属すれば、行動に制約が付く」



 それは現実世界の会社でも同じだ。



 己は会社に守られ利益を得ることもできるが、それと同時に組織のルールに縛られる。シエロをそこに縛っていいのか——正直俺は悩んでいる。



「ではどうだ。目的のみが同じならば、マギアハウンドと協力体制というのは」



「協力体制か」



 俺たちの自由を尊重しつつ、お互いに情報を交換し合う中。必要な時に手を取り合う。所謂フリーでの契約のようなものだ。



「マギアハウンドは小僧に牙をむかれる心配はない、と同時、そちらはグロウスの拠点となる場所の情報を得る」



「ああ、助かる。俺は義贋総司郎」



 俺は右手を差し出した。



 するとガドウも岩のような手を差し出し握り返す。



「ガドウ=ロックだ」



 まさか目玉を潰された相手をすぐに手を握る事になるとは、人生は何が起こるか分からない。



「さ~て、それじゃ話もまとまったようだね?」



 どこから出てきたのか、俺の後ろから陽気な女性の声が聞こえてきた。
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