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第23話 追放系ヒロインともふもふ枠。

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 護衛依頼は基本的に戦闘は避ける。

 それが一番安全で無事となることだ。

 うん、それは私にもすぐに理解できた。
 危うきに近寄らず、触らぬ神にたたりなしという、先ほども思ったのの身近なやつですな。
「しかし、今夜は少し安心して眠れそうだ」
 ロザリーさんはほっとしている。夜中が、寝ている間が1番危険。
 私に――いや、私が持っている鱗に、魔物は恐れて寄ってこない。
 たまに見かけても人間の彼女たちと一緒だからか遠巻きにされてる。

 だけどその代わりのように。
 やはり人間相手は、鱗の加護など効かないようだとご自分たちで。そのあたりは引き続き警戒態勢。
 人間はジャンルが違うんだろうなぁ。
「いや、それでも魔物が襲ってこないだけでも、ありがたいことだ」
 何せソロ冒険者。
 一人で何でもしなくてはならない。
 だから無理なこともあるから、ロザリーさんは、基本的に護衛依頼中は戦闘は避けることにしているらしい。

 それは依頼主――今回はエリナさんの身の安全が優先だから。
 護衛人数が多ければ迎撃なり、戦いはできるらしい。
 けれど今のように一人ならば、手が回らない事もあるから。
 ゴブリンの時もそうであった。
 エリナさんを護れて良かったなぁと、ロザリーさんはほっとしているそう。


 ここまで、二人の立場や状況などをお聞きして、私はひとつ、思い至ったことがある。
 これはもしかしたら、アレなんじゃないかしら。


 追放系ヒロインともふもふ枠。


 もふもふ――そう、フェンリルとか、聖獣と謂われるあたり。
 それだったんじゃない? 私達?
 我が身をみる。もふもふだけど、もふもふだけども……もふもふ……も……。

 すんっ。私だって本当は犬派だもん。実家のわんこのお腹もふりてぇ……すんっ。

 鼻をすすって、現実逃避から戻る。
 これは、うん。物語で良く始まる、冤罪を受け、辺境や他国に追放されるヒロインが、途中「もふもふ」なかわいい、しかし偉大な獣を拾い、主従なりしの関係を結び、そしてヒロインはもふもふとスローライフをおくるという――そんなお約束だったのではないかしら?

 しかし、現実現在、ここにいるもふもふはただの飛べない鳥。(オプションでドラゴンの鱗付き)と、括弧で追加されはするだろうけれど。

 ……これもまた、バグ、だろうなぁ。やっぱり。

 内心でエリナさんに申し訳なくなる。
 きっと彼女にここで「ドラゴン」が拾われるシナリオだったのだろう。
 もふもふではなく、聖獣枠、いやさ――神に等しい存在枠かな。この世界のドラゴンの位置なら。
 ふたりに教えていただいた、自分の本当の位置。

 それでひとつ、考えた。
 これは物語の強制力というやつかしら。

 私がここにいる理由。

 巣からどうやってここに、冒険者たちのところにいたのかが解らなかった。
 それがバグなりに強制力が働いて、ヒロインのもとに引き寄せられたのならば。
 ……何て、考えたんだけどどうなんだろう?

 ちらりと見るエリナさんは陽にあたると白く輝く金色の髪、宝石のような深い青い瞳の美少女だ。
 彼女は追放されて、すでにスローライフをおくっていた。
 話をさらにお聞きすると、幼い頃に森に訪れる祖父母と共に、その森での暮らし方などを遊び混じりに教わっていたと、懐かしそうに。それがあったから、辺境での田舎暮らしも順応できたと。

 おう、スローライフ知識もすでに。
  物語には、もふもふにはスローライフのお手伝い要因な枠もあったと思うのに。
 だが。
 私にも一応農家産まれな知識はあるけど――姉たちと歳も離れていて、物心ついたらすでに農業校に進学していた姉とは手際も知識量も違っていたから、私にはお手伝い程度、できて教わった家庭菜園程度の豆知識しかないんだよな。あと、オタのあれこれ。
 私にはキャンプを思い出すこの野営。
 このロザリーさんとの野宿も、夜の見張りの交替にも文句もなさらない。
 そもそも、お一人でちゃんと護衛まで雇って。計画性もある。

 立派よね。
 立派なヒロインよね。
 ますます、バグですみませんとうなだれる。
 本当ならもっとなにかしら有力なお供が来たんじゃないかしら。
 私はただのふわふわもふもふまんまる。
 できるのは――魔物が襲ってこない御守りかなぁ……。

 ……もふもふ、しょんぼり。



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