18 / 36
第18話 神=災害
しおりを挟む私はロザリーさんに干した果物みたいなものを頂戴した。
何が食べられるか解らないと正直に話したんだ。
「ならば、果物はどうだろう? 無理はしなくていいからな?」
甘くて美味しぞと……あ、ロザリーさんの目には私は魔物とはいえ、子供なんだ。
……やっぱり優しいひとだな。
でも、動きがきびきびしていて、何だか……そう、生前に知り合いだった元自衛隊員さんに似てる。使ってた野営用の寝具など、ゴブリンに襲われたから慌ててまとめていただけだというのを、今のうちにたたみ直すというのも、なんかピシッとしてる。毛布と角と角がぴったりぴっしり。
冒険者さんだけど、どこか軍人さんめいてるんだよな。
まぁ、訓練を受けたひとだな。
冒険者てこういう雰囲気なんだろか?
「果物……いただきます」
こんにちはと同じく、大事な言葉。頂戴いたします。
杏かな? 味は桃系だと思うその干した果物は、干し果物特有の堅さはあるけどさくりと歯切れ良く……くちばし切れ良く噛み切れた。
ペンギンは魚を頭から丸飲みだけど、私は何となく人間の感覚で咀嚼する。いや、咀嚼できたことにも実は驚いてんですけどね。
うん、甘くて美味しい。
差し出されてからひっそりと気になっていた、この世界の食べ物が自分の感覚と違っていたらどうしようという心配はなくなったかな。
味覚合わなかったり不味すぎっていうやつも、飢え死につながる理由なるらしいし。食べられない、つらい。
「美味しいです」
ロザリーさんにお礼はもちろん。
短い両手で大事にもって、さくさくとくちばしでついばむ。
人間ふたり、特にロザリーさんの視線が微笑ましい……さてはひっそりかわいいもの好きですかな? なんてね。
「それでドラゴンですが、神さま……」
うーん、自分で言うのは何だかこそばゆい。
「もはや神、というのは?」
私は何も知らなくて、と首を傾げる。そんな私の様子に、ふたりも不思議そう。
「あなたはドラゴンのことを知らないの?」
鱗――加護をもらったのに、とエリナさんの疑問もごもっとも。
「えぇと、実は私は生まれてからまだわずかなんです」
嘘じゃないし。
「巣から出たのも初めてです。だから、まだよくわからないことだらけで」
本当にね。
ドラゴンのことは知っているよ。家族だもの。だけど、ドラゴンがどういう存在なのかは知らない。
兄姉たちは知っているのだろうか。
家族間で自分のことはあえて話すようなことではないからなぁ……。
……あと、私が生まれ変わりにバグ起きた可能性高いからね。
「……なるほど。加護をもらった理由は?」
「それは、本当にもらったとしか」
説明できないよ。兄上さまが巣立ちする前にくれたんだから。
「どうやって頂いたのですか?」
エリナさんはそんなに鱗が気になるのかな?
「いや、本当にもらった理由は……巣にいるときにもらったとしか」
私は鱗を撫でる。
「ドラゴンが加護を与えるなど、物語か伝説の中だと思っていた……」
ロザリーさんのいうことにも気になり、尋ね返す。
「伝説なんですか?」
そんなに少ない?
「ああ。ドラゴン自体が伝説クラスだ」
ただし、低位種としてのワイバーンなどはいるとのこと。話していたら割り込まないかななんて、ちょっとわくわくしたけどそんなこともなく。
そういえば一角猩々さんが言っていた。霊峰とか、獣王国に目撃情報があるのでしたっけ。あの時はそうなんだと思っていたけど、一角猩々さんの雰囲気、今思えば伝説にある、てことだったか……。
「伝説クラスな稀少種だから神さまなんですかぁ……」
なるほどなー、と思っていたら、ロザリーさんもエリナさんも「まだ解ってないな」て目でこっち見てる。うん?
「確かにドラゴンが神であるというのは、伝説の中にもあるのだが」
「ふむふむ?」
いわく――
その咆哮は炎の渦。慈悲なき氷雪。報復の雷。枯れ果てる大地。
地を覆う広き羽ばたきは嵐となり。
爪の一薙ぎで空は裂け、尾の一振りで山崩れ、国滅ぶ。
何その自然災害!?
「……なるほど、神」
理解しました。
私は狩りゲームのドラゴンと思っていた。自分をも。
だけどこの世界のドラゴンは――神。
脳内で、狩りのゲームに出ていて素材剥ぎ剥ぎされていたドラゴンから、ファンタジー世界の召喚されてフレア吐くクラスにかわりました。
あれだなぁ。
八百万の神がいる世界で育っている日本人だから理解早いのありましょう。
ときに自然を神と崇め奉るのは、災害を恐れているからというのもあるよね。
日本の神さま、まさにそれがありますし。日照りや水害も、なんだかんだ神さまの為業な時代もあったもんですわ。
田舎の祭り思い出すなぁ。起源は雨乞いだったて婆さまに聞いたなぁ。小学生の頃、神社で神楽お囃子の笛を吹いた記憶です。今では甥っ子たちがまだやってるのかな。
あら、神社に奉られた水神さまってまさにドラゴンでしたわ……親近感抱くべきかしら。
しかし、存在するだけでそんな神あつかい……に、なるんだろうな。
つまりドラゴンの神は――触らぬ神に、て方向だ。
ドラゴン、つまり自然災害なほどに恐い存在。
もはや、神。うん。
「かつてリルファンという国が、ドラゴンの怒りで滅んだという伝説が有名かな」
この世界の児童文学的なやつらしい。
「私も読んだことがあります。ドラゴンの大切にしていた宝を盗んだ人間が、罰を受けるお伽話でしたね」
「いやいや、数年前にリルファンの遺跡らしきものが見つかって、歴史的にも真実らしいですぞ」
遺跡かぁ。この世界にもそういうのあるんだ。
土曜日のミステリーなハンターさんが出演する番組が好きだったから、そわそわするですよ。
しかし、ドラゴンとはそんな恐い存在……私がですか?
……ふかふかまんまるな存在が?
12
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
異世界転移の……説明なし!
サイカ
ファンタジー
神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。
仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。
しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。
落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして…………
聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。
ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。
召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。
私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。
ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない!
教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない!
森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。
※小説家になろうでも投稿しています。
今日から始める最強伝説 - 出遅れ上等、バトル漫画オタクは諦めない -
ふつうのにーちゃん
ファンタジー
25歳の春、転生者クルシュは祖国を出奔する。
彼の前世はしがない書店経営者。バトル漫画を何よりも愛する、どこにでもいる最強厨おじさんだった。
幼い頃の夢はスーパーヒーロー。おじさんは転生した今でも最強になりたかった。
その夢を叶えるために、クルシュは大陸最大の都キョウを訪れる。
キョウではちょうど、大陸最強の戦士を決める竜将大会が開かれていた。
クルシュは剣を教わったこともないシロウトだったが、大会に出場することを決める。
常識的に考えれば、未経験者が勝ち上がれるはずがない。
だがクルシュは信じていた。今からでも最強の座を狙えると。
事実、彼の肉体は千を超える不活性スキルが眠る、最強の男となりうる器だった。
スタートに出遅れた、絶対に夢を諦めないおじさんの常勝伝説が始まる。
これがホントの第2の人生。
神谷 絵馬
ファンタジー
以前より読みやすいように、書き方を変えてみました。
少しずつ編集していきます!
天変地異?...否、幼なじみのハーレム達による嫉妬で、命を落とした?!
私が何をしたっていうのよ?!!
面白そうだから転生してみる??!
冗談じゃない!!
神様の気紛れにより輪廻から外され...。
神様の独断により異世界転生
第2の人生は、ほのぼの生きたい!!
――――――――――
自分の執筆ペースにムラがありすぎるので、1日に1ページの投稿にして、沢山書けた時は予約投稿を使って、翌日に投稿します。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない
しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30)
小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。
ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。
それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。
そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。
とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。
ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。
冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。
今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。
「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」
降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決!
面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。
これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる