生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ

文字の大きさ
上 下
15 / 36

第15話 ゴブリンに襲われ恐れられ、自己紹介?

しおりを挟む


「私は――ジュヌヴィエーヴといいます」

 私の自己紹介に、変わらず戸惑ったまま人間の二人も……まぁ、おっかなびっくりだろうが。



「ジュヌヴィエーヴ……」



 抱き上げている赤い髪の女性がゆっく繰り返す。種族名ではなく、個体名だと解ってくれたよう。

 二人の視線が「大仰な名前だな」と言ってそう……そうだね、でも母上さまがつけてくれたのだもの。



「わ、私はロザリーと申す」

 赤い髪の女性はロザリーさん。

 ロザリーさんは、皮の胸当てに頑丈そうなブーツにマント。腰に下げた剣といい、私が生前親しんでいたファンタジー世界にあるよう、冒険者なお姿。

 赤い髪にキリッとした切れ長の黒い瞳。髪は邪魔にならないようにか束ねられていて、雰囲気やたたずまいから、男装のようにもみえて。

 生前の友人が好きな推し様にも似ているかもしれない。



「……私はエリナ、です」

 エリナさんは引き続き友人の好きそうな、まさに娘役な美少女。

 光が当たると白にも見える黄金色の髪に、宝石みたいな青い瞳。形のよい唇は瑞々しい桃色。

 服装こそ旅人のような姿だけど、舞台に立つきらびやかなドレス姿はさぞかし美しいんだろうなぁ。



 ――そんな事を思うのは……エリナさんが本当に「お姫様」だと、教えてもらうことになったから。



 私たちは自己紹介のあとに移動しながらお話することにした。

 私はまたロザリーさんに抱きかかえられて移動。歩幅が違い過ぎたので……。

「では、お二人が夜営していたらゴブリンが?」

「ああ、数は多くなかったが、ゴブリンは仲間を呼ぶからやっかいなのだ」

 ロザリーさんとエリナさんはこの森の先にあるという、とある場所を目指して来たらしい。

「もう少し岩場に近いところに使える野営所があると聞いてはいたのですが、そこは目的地からは遠回りですし……」

 時間と歩く労力を惜しんで、危険かもと思いつつ、野宿したわけらしい。

 ロザリーさんの様子から、そこまでたどり着くエリナさんの体力が無かったんだなと、うっすら察し。



 しかし、その野営所て……脱出してきたところですわなぁ……。



 冒険者ギルドによって、安全に野宿できるよう、あちこちにそうしたキャンプが作られているらしい。中には設備が古くなっていたり、周辺の危険度があり使えないキャンプもあったりするから、そうした点も訪れ利用する冒険者が使用したあとギルドに報告するシステムなそうな。

 そして私は先の三人を「狩人」と思っていたけど、「冒険者」が正しいようだ。

 だって狩人ゲームのイメージが強かったんだもの。自分、狩られる側ドラゴンだし。

 狩人は別にちゃんとした職業としてあるみたい。魔物も討伐することもあるけど、主に鹿や猪など、まぁ害獣駆除的な。うちの生前の田舎でも猟友会がシーズンには頑張ってくださっていたなぁ……。



 そしてロザリーさんもやはりお姿のとおり冒険者とのこと。

 今はエリナさんに雇われ、護衛のお仕事中。

 そんなこんなで、ゴブリンに三匹ほど遭遇した――と、いうか休んでいたところを襲われて。

 ロザリーさんが撃退しつつ、荷物をまとめて逃げていたところ、五匹に増えたゴブリン。ゴブリンは仲間を呼ぶので、それがやっかい。

 ゲームとかだと序盤のレベルアップに設定されし雑魚だけど、やはり現実は大変だ。

 二人の話を聞きながらそう考えていた。

「ところが急にゴブリンたちが……何と言ったら良いかな? そう、怯えはじめたというか……?」

「恐慌状態でしたわね……?」

 ゴブリン相手にロザリーさんが逃げることより、本格的に迎撃に身構えたとき。

 ゴブリンたちの様子が変わったらしい。

 二人を追いながら突如、混乱したような様子を見せ始め、するとすぐに怯えはじめたらしい。

 そのうちの一匹がまさに恐慌状態で、空に向かって持っていた矢を放ったら――私が落ちてきた、と。



 なるほど、あの矢を射ってきたのはゴブリンだったのか。



 して、恐慌状態とは?



「ゴブリンたちに何が起きたのでしょう?」

 このロザリーさんがそれほど強い怒気でも発しなさったか?

 そんな風に首を傾げる私に、ロザリーさんもエリナさんも首を傾げる。

「いや、むしろ我らも不思議で……」

 ロザリーさんは眉間に皺もよってる。

「そして君が落ちてきて、ゴブリンたちは悲鳴を上げて逃げ出したようにも見えた」

 そして今に至る。



 ……うーん?

 私が落ちてきて?



「何でだろう……」

「私たちが知りたいのだが?」

「あ、あの……あの時、巨大な鳥に捕獲――連れられていましたが、その鳥に怯えたのでしょうか?」

 エリナさんは皺になってないけど、同じく迷ったようなお顔。うん、言葉選んでくれてありがとうございます。

 うん、捕獲じゃなかったんだよー。餌じゃなかったんだよー。



「あれはハーピーさんです」

「は、ハーピー、さん?」

「はい、ご縁がありまして」

 ハーピーさん、ご無事かなあ……。ハウンドウルフさんと一角猩々さんたちも。

 私はのほほんと、別れた三人を思い浮かべる。思えばまだたった数時間……私の人生、いやさ竜生、急に波瀾万丈だなぁ……。



「ハーピーに恐怖したのか……?」

「いえ、何故ハーピーと?」

 私がのほほんとしている間にロザリーさんたちはまた悩んでる。

 いや、私も不思議で……。

「……あ。」



 あれかな?

 また、あれかな?



 私は胸にある兄上さまの鱗を撫でる。

 竜のオーラのおかげかな?

 ゴブリンは序盤のレベルアップ雑魚キャラ……まぁ、現実はそうでもなく厄介な相手だとしても。

 ハウンドウルフさんたちですらひれ伏した、鱗だ。

 ゴブリンが怖がるのも、さてはありますや?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...