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第14話 言葉の壁がないってイイネ!再び。

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 私はてっきりこの世界は人間も我らモンスター――この人間さんたちから呼び方は魔物の方で統一されていると教えてもらった――も会話できるんだと思っていた。

 自分が先の狩人たちの言葉も、ハウンドウルフさんたちの言葉も、両方理解できていたから。

 だけど、二人の様子から違うのかと思い始めた。

 赤い髪の女性は、そんなんで一瞬私を落としかけたけど、ちゃんと抱きかかえ直してくれた。ありがとう。



「あの……」

 私がもう一度口を開き始めると、二人はまたまじまじと私を見てきた。



「こ、こんばんわ」



 何て話したら良いかわからなくて、とりあえずご挨拶。挨拶こそがコミュニケーションの第一歩?

 田舎ではとりあえず顔見知りだろうが、顔を忘れてしまっていただろうが、「こんにちわ~」は基本的に最強だ。礼儀でもあるしね。その後は「今日は良い天気ですね~」「今日は暖かいですねor冷えますね」のパターンでいっとけばなんとかなる!

 ……と、里帰りの度に私が学んだことで。

 田舎のじいちゃんばあちゃんたちはそれでなんとか。逆にそちらの方が私のことを覚えておられて、私がどちらさまだったかなと思い出せなくても会話が進むものさ。「あら、永倉さんちの。おかえりー」と。

 たまに本当に、互いにまったく知らない人もいたりするけど。それでも「こんにちわ」は大事。

 

「こ、こんばんわ」



 ほら、赤い髪の女性は挨拶をかえしてくれた。やったね、第一歩。

 時間的にまだ夜だからこんばんわにした私に応じてくれたのだ。

「えーと、今日は良い天気のようですね?」

 お星様もお月様もきれいだったからな。

 私を見下ろす女の人の肩の向こう。あれ、そろそろ夜明けなのかな。空が白み始めてる。おはようございますだったかな。

「あ、ああ、晴れるとありがたい」

 お、会話が進む。よしよし。

「お二人はどちらから?」

 ちょっと話題にきりこんだよ。人間さんたちは顔を見合わせている。

「ちょ、ちょっとまってくれ。私たちより、その、君がなんなんだ?」

 赤い髪の女性が抱いていた私の両脇に手を入れる形で持ち上げ直した。

 改めてマジマジと見つめられちゃう。

「…… もふもふだ」

 小さくつぶやかれた。

 ふふ、ですよ。もふもふです。そう、私はふかふかまんまるぼでぃーですよ。

 もう、ね。それはあきらめのところにきてるから。

 実は私も悩んでいる。

 現状に、だ。

 挨拶に饒舌になり、少しばかり現実逃避していた自覚はある。



 何で無事だったんだ?



 ものすごい上空から落ちたよな?

 持ち上げられたまま、くりんと首をそらせば、背の高い樹木が目に入る。そのさらに上、白み始めた空の中にいたはず。ハーピーさんの言葉――風をつかまえるとは、上昇気流などに乗るという意味だったのではなかろうか。

 そんな事を考えれば、それなりの高さまでハーピーさんは飛び上がっていたはずで。

 ……そんな高さから落ちて、なんで私は無事だったんだ?

 ハーピーさんはどうしただろう。ちゃんと逃げただろうか。お里への風とやらをつかまえられただろうか。ハーピーさんこそ無事だと良いのだけれど……。



「えぇと、何からお話すれば良いのか……」

 私がくりんと首を戻すと、ごくりと二人が息をのんでうなずいた。

 何だか、そんなに身構えられると……今度は珍獣枠かしら、もしかしたら。

 先の狩人もペンギンを知らないようだったし。

 ああ、でも考えればこの世界の事を本当に何も知らない私だ。あの狩人ゲームな世界観だとしたら、そしてよくある転生ものでもあるようなだとしたら――この世界の文化はどのレベルだ?

 ファンタジー世界としたら、ネットはじめ、情報通信などはどうなっているのだろう。

 それを踏まえて、生き物図鑑はどんなレベルなのかも気になるところ。

 この世界、果たしてペンギンさんはいますかな?



「私は――ジュヌヴィエーヴといいます」



 悩んだ末、まずは自己紹介にした。

 自分にケガがなかったことの他にも気になっていること。



 ――何で言葉が通じるのか。



 魔物にも人間にも言葉が通じるのは、自分でも解らない。

 ひとつ思い当たるのは、自分が人間であったことを覚えているからではないか、ということだ。

 そう、私が生まれ変わりだからだろうか、と。

 人間の気持ちやあれこれがわかるから。そして現在、魔物であるから魔物の方も……。

 あとはもう、転生チートかバグのどちからしかないし、それだったらお約束すぎるんですけどネ!

 ……ペンギンな時点でバグな気がしていたけども。

 まあ、言葉が通じるのは良いことだと前向きに行こう!



 
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