理想のゲンジツ

こたつ猫

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第1話 魔法少女に隠された秘密

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~みんなが笑顔になれるなら、私は戦い続ける!~
これは20年前に世界を守った初代魔法少女コスモスの言葉だ。

私たちの世界には、悪の秘密結社や海の怪物、宇宙からの侵略者など、多くの敵が存在する。私たちは奴らを『災い』と呼ぶ。『災い』には現代の兵器は通用しないため、世界を破壊していくのを人類は止められなかった。そんな中現れたのが魔法少女である。『災い』が現れれば、どこからともなく駆けつけて、苦戦しつつも必ず勝利する。見た目は中高生くらいで、可憐なドレスで戦う少女たち。すぐに人類のヒーローとなった。

そんな魔法少女には2つ不思議な部分がある。
まず、彼女たちの正体は誰も知らないこと。
彼女たちは世界中で活躍しているし、映像も残っている。なのに、誰なのかはいまだにわかっていない。
そして、魔法少女はなぜか毎年交代していること。
一年戦うと、新しい魔法少女が現れて、前の魔法少女は出て来なくなる。彼女たちは2~5人のグループで戦っているが、そのグループ全てが入れ替わる。なぜかはわかっていない。
謎多き魔法少女たち。それでも、彼女たちになりたいと思う少女は少なくない。
中3である私、田中正奈は今でも魔法少女になりたいと思っている。まあ、本気でなりたいと思っているわけではなく、なれたらいいなという感じだ。
受験生になって、最近はそんなこと、考えてもいなかった。
今、この時までは。


「オハヨウ。君ノ名前ハ?」

目覚まし時計がなる中、私に向かって、宙に浮く熊の人形が喋っている。
なんだ、この状況。とりあえず今日の出来事を振り返ろう。
まず朝、7時に目覚まし時計がなったので起きる。目の前にこいつがいる。
・・・・だめだ、わからん。夢かな?

「夢ジャナイヨ。」
「ひっ。気持ち悪。」

心を読まれたらしい。思わず口から思ったことがこぼれる。

「ヒドイナ。トリアエズ、目覚マシ止メテ、制服二着替エタラ?」

私は、熊の言われたことをゆっくりこなす。着替え終わって熊を見ると、私の漫画を勝手に読んでいた。

「アッ、ヨウヤク終ワッタ。遅カッタネ。」

やれやれ、みたいなジェスチャーをする熊。無性にイライラする。

「ジャア改メテ、君ノ名前ハ?」
「田中正奈。」
「セイナ、ダネ。僕ハ『フー』ダヨ。」

フーがちっちゃい腕を伸ばした。握手をしたいらしい。腕の先を握ると、フーは嬉しそうに体を揺らした。

「可愛い。」
「アリガトウ。君ハ正直ダネ。魔法少女二相応シイ。」

何言ってんだこの熊。寝起きだからか、全く思考が追いつかない。

「ちょっと待って。魔法少女ってあの魔法少女?」
「ドノ魔法少女カワカリマセンガ、ソウデス。」
「マジか!」

心拍数が急に上がった。呼吸が荒くなる。

「アノ、説明シテモイイ?」

興奮する私に、フーが話しかける。私は状況理解のためにも聞くことにした。

「君ハ今代ノ魔法少女二選バレマシタ。コレハ変身用ノステッキデス。ドウゾ。」
「ありがとう。」

フーからキラキラゴテゴテして、先が星の棒を渡される。

「ソレヲ横二振レバ、変身デキマス。次二注意事項デス。魔法少女デアルコトハ誰ニモ言ッテハイケマセン。」
「はい。」
「1年間、悔イノナイヨウ過ゴシテ下サイ。」
「はい。・・・ん?」
「次二仲間ニツイテデスガ。」
「ちょっと待って。悔いのないようにってどういうこと?」

なんか嫌な言い方だった。1年で交代なのは知っているけど、なにか引っかかった。

「ソノママノ意味デス。セイナノ残リノ1年、悔イノナイヨウ、」
「・・・残りの一年って?」
「ヤラカシタ。」
「フー、答えて。」

私はフーの体を掴んで、睨む。初めは抵抗していたが、やがてフーは諦めたように、力を抜いた。

「セイナハ、ナンノ代償モナシニ世界ヲ守レル、ソンナ甘イ考エヲ持ッテマスネ?」

私はその言葉通りで、ドキッとした。フーがまたバタバタし始めたので離した。

「ソンナワケアリマセン。歴代ノ魔法少女ハ、モトカラ強カッタワケジャナイ。自分ヲ犠牲ニシナガラ、戦ッタカラ強カッタンデス。」
「じゃあ残りの1年って・・・」
「セイナノ寿命デス。本当ハ説明シナイツモリデシタ。」
「そんな・・・・魔法少女が1年で交代していたのはそのせいだったの?」

私の質問にフーは答えない。ただ俯くばかりだった。

「セイナニハ魔法少女シテ貰ワナイトイケナイ。イヤカモシレナイケド・・デモ・・」
「嫌じゃないよ。」
「ハェ?ナンデ?」

変な声を出しながら、フーは首を傾げた。

「だって私がやらなかったら、頑張ってきた魔法少女たちが報われないでしょう?それに私、あと1000年生きるつもりだから。魔法少女になったくらいで寿命は尽きないのよ。」

私は、できる限りの笑顔を作った。久しぶりだからうまく笑えているか、心配になる。フーは私の膝に座ると、私の手を抱きしめた。

「デモ、怖インデショ。手、震エテルヨ。」
「そりゃそうよ。怖いに・・・あっ。」

思わず漏れてしまった本音に、フーは声を出して笑った。恥ずかしくて顔が熱くなる。

「・・・君ハ正直ダネ。ヤッパリ魔法少女二相応シイ。」

こうして、私はフーと一緒に戦うことになった。
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