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1章

マジョマリの為ならば

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「ただいま~。」

 真子は家に帰ってくると、勢いよくソファーにダイブした。

「マジョマリだぁ~!」

「先に手を洗いなさい!あと、着替えも。」

 お母さんがハンバーグのタネから顔を上げずに言う。

「ほーい。」

 真子は世界最高記録並みの速さで着替えて、手も洗った。

 そして、早速テレビをつける。
「...え?」

 録画欄にマジョマリの文字はなかった。

「え、え...?」
 あまりのことに頭が真っ白になる。

「どうしたの~?」

 お母さんが今度は顔を上げる。

「マジョマリが、ないの...。」

 真子はやっとの事で声を絞り出す。
 
「ええ?そんなはずないわよ。ちゃんと毎週予約してたんじゃないの?」

「...あ...そうだ、今日は最終回だからちがう時間帯になるんだった...。」

 真子の家のテレビは自動で録画してくれたりはしない。

「...。」

 真子はソファーに突っ伏した。

 お母さんが心配そうに聞く。

「友達に録画してる子はいないの?」

「いるわけないじゃん.........ん?」

 真子の頭にフラッシュバックしたのは、マジョマリグッズのついている夢見のバッグ。

「いた!」

 連絡網を引っ張り出し、夢見の家に電話をする。

『もしもし!!夢見さんのお宅ですか!?あの、夢見さんはいらっしゃいますか?』


『ええと、家は全員夢見ですが。どちら様ですか。』

 応対した相手は困ったように言った。

『あ、妃咲真子です。クラスメイトの夢見さんを...。』

『ああ、それなら俺だけど、お前誰?聞いたことねえな。』

 相手が途端にくだけた口調になる。

『いや、ほら今日話したじゃん!生徒会長の!』

『生徒会長ぅ~?なんか聞いたことあるような、ないような...。』

(な...なんで...はっ!あいつ、私が話してる間ずっとゲームを...!なんて失礼な!)

 頭に血がのぼってくる。

『もう、いい!とにかく今からあんたの家行くから!!』

『は、はぁ?なんで会ったこともない奴が家に来るんだよ!』

『会ったことあるの!あんたの家どこ?』

『いや、だから教えねぇよ!』

(...)

『...じゃあ、教えてくれたらあんたのスマホ、先生にかけあって明日返してもらうようにするから!』

 真子はもう必死だ。

『まじかよ!?ついに百合ちゃんとのスウィート♡タイムが解禁か!ひゃっほおおおおお!!!!!...で、なんだっけ?』

『...だから住所』

『ええと、...』

 真子はそれを聞くなり、

『バイバイ!』

 と言ってガチャン!と電話を切り、駆け出した。

「ちょっと、どこ行くの~?もう暗いわよ~!」

 お母さんが真子の背中に向かって叫ぶ。

「8時までには帰ってくるから!マジョマリ見てくる!」

 真子は叫び返すと、夕暮れの街を走って行った。
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