龍神様の生け贄

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
3 / 7

3話

しおりを挟む










 沈んでいく

 ゆっくりと

 全てを吞み込むかのように





 水に濡れた着物が纏わりついて動けず、瞳に絶望の色を浮かべている桜子の小さな身体は仄暗い湖の底へと沈んでいく。

 (パパ・・・ママ・・・)

 両親と祖父母、一緒に遊んだ近所の子供達に幼稚園の友達の顔が桜子の脳裡に浮かぶ。

 『我が贄よ・・・』

 息が出来なくなり意識を失ってしまった桜子を巨大な白い蛇───否、水の神にして村の守り神である龍神が静かに受け止める。





 (あれ?何か涼しい・・・)

 冷房とは異なる冷気を含んだ風を肌に感じた桜子は目を覚ます。

 『気が付いた?』

 うわ~っ・・・

 (凄く綺麗なお兄ちゃん・・・)

 年の頃は小学生の低学年くらいだろうか。

 桜子の瞳に映るのは、近所のお姉さんがプレイしている乙女ゲームに出てきそうな男性をそのまま小さくしたような銀髪の綺麗な男の子なのだが、何かのイベントがあるからなのか源氏物語に出てくる装束に身を包んでいる。

 尚、二人が居る部屋の片隅には少年と同じように源氏物語に出てきそうな女房装束に身を包んだ女性達、狩衣に身を包んだ男性達が控えていたりする。

 『こ、ここは、どこ、なの・・・?』

 『ここは〇〇〇村の〇〇〇(村と湖の名前が桜子には聞き取れない)湖の底。でもって僕の御殿・・・お家だよ』

 異界と言えばいいのかな?

 パラレルワールドと言えばいいのかな?

 何かの拍子でここと桜子が住む次元が繋がってしまった結果、異世界の人間が迷い込んでしまうのだと銀髪の男の子が教える。

 異界

 パラレルワールド

 異世界

 だから村の人達だけではなく少年も時代劇のような恰好をしているのかと、彼の話を聞いた事で桜子は得心がいった。

 『ところで君は何て名前なの?』

 『あたしは斉藤 桜子。お兄ちゃんは?』

 『僕は〇〇〇』

 村と湖の名前のように少年の名前が聞き取れない桜子は困ったように眉を顰める。

 『僕の名前が聞き取れないって事は、桜子はこの世界に馴染んでいないんだね』

 そりゃそうだよね~と呟いた少年は部屋の片隅に控えていた女性達に自分と桜子の食事を用意するようにと命じると、彼女達は厨房へと向かう。

 暫くすると少年に仕えている侍女と思われる女性達が二人分の食事を運んできた。

 『食べようか?』

 いただきますと手を合わせた後、少年と桜子は料理を食べ始める。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

刻の短刀クロノダガー ~悪役にされた令嬢の人生を取り戻せ~

玄未マオ
ファンタジー
三名の婚約者候補。 彼らは前の時間軸において、一人は敵、もう一人は彼女のために命を落とした騎士。 そして、最後の一人は前の時間軸では面識すらなかったが、彼女を助けるためにやって来た魂の依り代。 過去の過ちを記憶の隅に押しやり孫の誕生を喜ぶ国王に、かつて地獄へと追いやった公爵令嬢セシルの恨みを語る青年が現れる。 それはかつてセシルを嵌めた自分たち夫婦の息子だった。 非道が明るみになり処刑された王太子妃リジェンナ。 無傷だった自分に『幻の王子』にされた息子が語りかけ、王家の秘術が発動される。 巻き戻りファンタジー。 ヒーローは、ごめん、生きている人間ですらない。 ヒロインは悪役令嬢ポジのセシルお嬢様ではなく、彼女の筆頭侍女のアンジュ。 楽しんでくれたらうれしいです。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

その婚約破棄、巻き込まないでください

有沢真尋
ファンタジー
公爵令嬢の婚約者である王子に、あのセリフを言われたら詰み。 絶対に巻き込まれたくない男爵令嬢の戦いがそこにある―― このところ、貧乏貴族の娘であるミントは、公爵令嬢からはきつく当たられ、その婚約者である王子にはなぜかつきまとわられている。 このままでは、「貧乏娘が身の程もわきまえず婚約者のいる王子に言い寄った」という状況が出来上がってしまい、二人の婚約破棄騒動に巻き込まれてしまうのでは……!? どうにかしたい、とミントが相談したのは怪しい毒草マニアのお師匠様。 彼らに飲ませてしまえと取り出してきた薬は…… ※「アリスと魔法の薬箱」と同一世界観です。 ※作中の薬の効用はフィクションです。

婚約破棄された令嬢の恋人

菜花
ファンタジー
裏切られても一途に王子を愛していたイリーナ。その気持ちに妖精達がこたえて奇跡を起こす。カクヨムでも投稿しています。

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。

BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう? 2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は? 3.私は誓い、祈りましょう。 ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。 しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。 後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

処理中です...