二十代というだけで追放された召喚聖女は魔国でスローライフを送るつもりでした・・・

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
7 / 16

しおりを挟む










 「人間の客人よ、魔王様が貴女の話を聞きたいとの仰せです。案内いたしましょう」

 魔王とやらの側近の一人かな?

 ミドガルズ王国のイケメン貴族達もイケメンの部類に入るけど、私を魔王の元へと案内している男性───狼の尻尾と耳があるから狼男というか人狼でいいのかな?

 名前は知らないけどミドガルズ王国の連中と比べたら人狼の方が遥かにイケメンだった。

 「突然の訪問であるにも関わらず、見ず知らずの人間が魔王、様にお目通りを願い出たという無礼をお許し下さい」

 人狼に案内されるまま魔王と対面を果たした私は訴えたの。

 ミドガルズ王国の聖女召喚に巻き込まれた日本人で、日本に帰す方法があるのなら教えて欲しい!
って。

 私の話を聞いてくれた、玉座に腰を下ろしている眼球の白い部分が黒いヨボヨボの爺さんと後妻と思しき妖艶な黒髪美女(後に夏希は黒髪美女が後妻ではなく最初の奥さんである事を知る)、爺さんの隣に立つ顎が割れているマッチョと凛とした美女が教えてくれたの。

 世界は一つではなく星の数ほど存在している。

 異世界人を召喚するのも送還するのも禁忌である。世界のバランスを崩すからだ。

 大地・大気・大海・太陽・月・水・草木───要するにアーズガルドという世界のエネルギー、つまり星の生命を少しずつ使う事で異世界人を召喚したり送還する事が出来る。

 だがその行為は人為的に瘴気を発生させる。

 人為的な瘴気の発生は極端なまでの天候の乱れに天変地異、そして新たな魔物を生み出す。

 緑豊かな森を砂漠へと、肥沃な土壌を作物が実らない荒地へと変えるだけではなく星の寿命を縮めて行き世界の荒廃を進めると同時に異世界を繋ぐ空間を歪めるからだ。

 ミドガルズ王国は奴隷の命を使う事で自分達が住む世界を犠牲にする事なく異世界人を召喚する術を完成させたと思っているらしいが、先に述べたように彼等による異世界人召喚は世界を繋ぐ空間をより歪なものへと変化させていると同時にミドガルズ王国が作った異世界人の召喚術は欠陥だらけでもあるのだ。

 このままではアーズガルドという世界そのものが寿命ではなく、死の星と化し最終的には爆発へと繋がるらしい。

 だから私を日本に帰す事は出来ないのだと───。

 「そ、そんな・・・っ!」

 それってつまり・・・異世界人を元の世界に戻す術はあっても、アーズガルドという世界を守る為に魔王達は送還術を使わないと言っているのよね?

 日本に戻れないだけではなく、両親に職場の仲間、自分と同じ趣味を持つ腐女子仲間、そして恋人・・・というか付き合って半月だから男友達という表現が正しいのかしら?

 その潤一ともう二度と会う事が出来ないという事実に私は心の底から泣いたわ。

 「人間の客人よ。我等は貴女を日本に帰す事は出来ませんが、魔国・・・ヴァナヘルム王国で快適に過ごせるように手配いたします」

 イケメンの人狼さんが私を気遣ってくれている事も、異世界人という事で特別待遇してくれている事も分かるけど、私の望みは唯一つ。

 日本に帰る事だけ──・・・。

 「帰して・・・私を日本に帰して・・・っ!」

 もし、ラノベのように異世界の神様が起こした事故で死んだ→お詫びに神様が色んな特典を与えて自分の世界に転生させたという背景バックグラウンドがあれば私もヴァナヘルム王国で生きて行こうと気持ちの切り替えが出来た。

 でも魔王達は私を日本に帰す術があるのに送還術を使ってくれないの。

 アーズガルドという世界が滅びる?

 そんなの関係ねぇ!

 シブサンに投稿しているゴンザレス先生(プロのBL作家)の新作漫画(〇斗の拳的な画の18禁BL)を読みたいの!!

 潤一とデートの約束があるの!!

 だから日本に帰せと訴えている私は悪くない!!

 「アンドレアル、異世界人の女に手を焼いているみたいだな」

 そんな私の耳にイケボが入って来たの。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

嫌われ聖女は魔獣が跋扈する辺境伯領に押し付けられる

kae
恋愛
 魔獣の森と国境の境目の辺境領地の領主、シリウス・レングナーの元に、ある日結婚を断ったはずの聖女サラが、隣の領からやってきた。  これまでの縁談で紹介されたのは、魔獣から国家を守る事でもらえる報奨金だけが目当ての女ばかりだった。  ましてや長年仲が悪いザカリアス伯爵が紹介する女なんて、スパイに決まっている。  しかし豪華な馬車でやってきたのだろうという予想を裏切り、聖女サラは魔物の跋扈する領地を、ただ一人で歩いてきた様子。  「チッ。お前のようなヤツは、嫌いだ。見ていてイライラする」  追い出そうとするシリウスに、サラは必死になって頭を下げる「私をレングナー伯爵様のところで、兵士として雇っていただけないでしょうか!?」  ザカリアス領に戻れないと言うサラを仕方なく雇って一月ほどしたある日、シリウスは休暇のはずのサラが、たった一人で、肩で息をしながら魔獣の浄化をしている姿を見てしまう。

【完結】双子の妹にはめられて力を失った廃棄予定の聖女は、王太子殿下に求婚される~聖女から王妃への転職はありでしょうか?~

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
 聖女イリーナ、聖女エレーネ。  二人の双子の姉妹は王都を守護する聖女として仕えてきた。  しかし王都に厄災が降り注ぎ、守りの大魔方陣を使わなくてはいけないことに。  この大魔方陣を使えば自身の魔力は尽きてしまう。  そのため、もう二度と聖女には戻れない。  その役割に選ばれたのは妹のエレーネだった。  ただエレーネは魔力こそ多いものの体が弱く、とても耐えられないと姉に懇願する。  するとイリーナは妹を不憫に思い、自らが変わり出る。  力のないイリーナは厄災の前線で傷つきながらもその力を発動する。  ボロボロになったイリーナを見下げ、ただエレーネは微笑んだ。  自ら滅びてくれてありがとうと――  この物語はフィクションであり、ご都合主義な場合がございます。  完結マークがついているものは、完結済ですので安心してお読みください。  また、高評価いただけましたら長編に切り替える場合もございます。  その際は本編追加等にて、告知させていただきますのでその際はよろしくお願いいたします。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

処理中です...