二十代というだけで追放された召喚聖女は魔国でスローライフを送るつもりでした・・・

白雪の雫

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 「人間の客人よ、魔王様が貴女の話を聞きたいとの仰せです。案内いたしましょう」

 魔王とやらの側近の一人かな?

 ミドガルズ王国のイケメン貴族達もイケメンの部類に入るけど、私を魔王の元へと案内している男性───狼の尻尾と耳があるから狼男というか人狼でいいのかな?

 名前は知らないけどミドガルズ王国の連中と比べたら人狼の方が遥かにイケメンだった。

 「突然の訪問であるにも関わらず、見ず知らずの人間が魔王、様にお目通りを願い出たという無礼をお許し下さい」

 人狼に案内されるまま魔王と対面を果たした私は訴えたの。

 ミドガルズ王国の聖女召喚に巻き込まれた日本人で、日本に帰す方法があるのなら教えて欲しい!
って。

 私の話を聞いてくれた、玉座に腰を下ろしている眼球の白い部分が黒いヨボヨボの爺さんと後妻と思しき妖艶な黒髪美女(後に夏希は黒髪美女が後妻ではなく最初の奥さんである事を知る)、爺さんの隣に立つ顎が割れているマッチョと凛とした美女が教えてくれたの。

 世界は一つではなく星の数ほど存在している。

 異世界人を召喚するのも送還するのも禁忌である。世界のバランスを崩すからだ。

 大地・大気・大海・太陽・月・水・草木───要するにアーズガルドという世界のエネルギー、つまり星の生命を少しずつ使う事で異世界人を召喚したり送還する事が出来る。

 だがその行為は人為的に瘴気を発生させる。

 人為的な瘴気の発生は極端なまでの天候の乱れに天変地異、そして新たな魔物を生み出す。

 緑豊かな森を砂漠へと、肥沃な土壌を作物が実らない荒地へと変えるだけではなく星の寿命を縮めて行き世界の荒廃を進めると同時に異世界を繋ぐ空間を歪めるからだ。

 ミドガルズ王国は奴隷の命を使う事で自分達が住む世界を犠牲にする事なく異世界人を召喚する術を完成させたと思っているらしいが、先に述べたように彼等による異世界人召喚は世界を繋ぐ空間をより歪なものへと変化させていると同時にミドガルズ王国が作った異世界人の召喚術は欠陥だらけでもあるのだ。

 このままではアーズガルドという世界そのものが寿命ではなく、死の星と化し最終的には爆発へと繋がるらしい。

 だから私を日本に帰す事は出来ないのだと───。

 「そ、そんな・・・っ!」

 それってつまり・・・異世界人を元の世界に戻す術はあっても、アーズガルドという世界を守る為に魔王達は送還術を使わないと言っているのよね?

 日本に戻れないだけではなく、両親に職場の仲間、自分と同じ趣味を持つ腐女子仲間、そして恋人・・・というか付き合って半月だから男友達という表現が正しいのかしら?

 その潤一ともう二度と会う事が出来ないという事実に私は心の底から泣いたわ。

 「人間の客人よ。我等は貴女を日本に帰す事は出来ませんが、魔国・・・ヴァナヘルム王国で快適に過ごせるように手配いたします」

 イケメンの人狼さんが私を気遣ってくれている事も、異世界人という事で特別待遇してくれている事も分かるけど、私の望みは唯一つ。

 日本に帰る事だけ──・・・。

 「帰して・・・私を日本に帰して・・・っ!」

 もし、ラノベのように異世界の神様が起こした事故で死んだ→お詫びに神様が色んな特典を与えて自分の世界に転生させたという背景バックグラウンドがあれば私もヴァナヘルム王国で生きて行こうと気持ちの切り替えが出来た。

 でも魔王達は私を日本に帰す術があるのに送還術を使ってくれないの。

 アーズガルドという世界が滅びる?

 そんなの関係ねぇ!

 シブサンに投稿しているゴンザレス先生(プロのBL作家)の新作漫画(〇斗の拳的な画の18禁BL)を読みたいの!!

 潤一とデートの約束があるの!!

 だから日本に帰せと訴えている私は悪くない!!

 「アンドレアル、異世界人の女に手を焼いているみたいだな」

 そんな私の耳にイケボが入って来たの。











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