カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
442 / 451

閑話8.ミルクパン粥と卵とじうどん-5-

しおりを挟む










 二人で作ったミルクパン粥を紗雪は食べ切った。

 とはいえ普段と比べたら今の紗雪の食の進みは遅い方だったし、朝と比べたら幾分元気になっているような気はするもののそれでもまだ熱があるみたいだし何より歩みが遅かった。

 やはり夕食も胃に優しいものがいいだろうと判断したレイモンドは卵とじうどんを作るべく、製麺用の小麦粉と製菓用の小麦粉、塩水をボウルで麺を作っていた。

 捏ねた生地を清潔な布巾で包んで寝かせている間、レイモンドは紗雪の部屋を訪れて妻の熱を下げる為に置いている氷水で濡らしたタオルを交換したり、クローヴィスのオムツを替えたりミルクを与えたり、ミルクを飲んで腹が満たされた息子を揺り籠に寝かせたりと世話をしながら、画用紙で大人しくお絵描きをしているレオルナードを微笑ましい思いで見守っていた。

「レオルくん、何を描いているのかな?」

「あのね・・・れおね・・・ぱぁぱとまぁま、れおとくーくんをかいているの!」

 父親の問いにレオルナードがニコニコと笑いながら画用紙に描いている絵を見せる。

「これは・・・」

「まぁまにげんきになってほしいの!」

 レオルナードが描いていたのは、家族四人でホットケーキらしきものを囲っている姿だった。

 幼いとはいえレオルナードが描いた家族の絵はそれぞれの特徴をちゃんと捉えていたものだから、一目で誰を描いたのかが分かるものだったし、何より両親と弟への思いが込められていた。

「ぱぁぱ。まぁま、げんきになる?」

「ああ。レオルくんが描いた絵を見たら紗雪は・・・ママは元気になるよ」

「えへへ~♡」

「俺、パパは紗雪の為に卵とじうどんを作るからレオルくんはお絵描きして待っていようね」

「れおもてつだう!」

 幼子に大人が使う包丁を持たせるのは怖いが、寝かせていた生地に打ち粉をして麺棒で伸ばす作業ならレオルナードも出来るだろう。

(子供用の包丁・・・ネットショップであれば買えるのだろうか?)

 おままごとに使う玩具の包丁はあるが、子供でも使える包丁は買っていなかったはずだ。

(紗雪が元気になったらレオルくんの為に、子供用の包丁を買うように頼んでみるかな?)

「レオルくんは偉いな。紗雪の、ママの為にパパと一緒に作ろうな」

「あいっ!」

 元気よく返事したレオルナードが先頭に立ってキッチンに入っていく後ろ姿に笑みを浮かべながらレイモンドも息子に続いてキッチンへと入って行った。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

処理中です...