440 / 451
閑話8.ミルクパン粥と卵とじうどん-3-
しおりを挟む(次は紗雪の為に何か食べ易い料理を作らないと・・・)
今の紗雪の胃に負担にならない食べ物といえば粥かうどん、味噌汁やポタージュスープの類ではないだろうか。
(レオルくんとクーくんを産んで間もない頃に食べていたミルクパン粥がいいかな?)
「ぱぁぱ。まぁま、ごびょうき。れお、まぁまにおりょうりつくるの!」
こういう時は粥がいいだろうと判断したレイモンドがミルクパン粥を作ろうとキッチンへ行こうとしたその時、レオルナードが『自分も紗雪の為に料理を作る』と言い出したのだ。
「・・・・・・分かった。レオルくん、紗雪の、ママの為のお料理をパパと一緒に作ろうな」
「あいっ!」
「レオルくんは良い子だな」
「えへへ~♡」
自分の頭を撫でるレイモンドの手を心地よく感じながらレオルナードは父と共にキッチンへと足を踏み入れる。
「レオルくん、料理を作る前は必ず手を洗うんだよ」
「あいっ!」
蛇口から出た水でレオルナードがレイモンドに抱っこされながら手を洗う。
「ぱぁぱ?なにつくるの?」
「ん?ミルクパン粥だよ。レオルくんは、このパンを千切って欲しいな」
「あいっ!」
ミルクパン粥を作る為に、自分から受け取ったパンを小さく千切っているレオルナードの姿を、冷蔵ボックスから取り出した牛乳を鍋に注ぎそれを温めようとしているレイモンドは感慨深い思いで見つめる。
「ぱぁぱ。れおもまぁまといっしょの、たべるの」
「レオルくんもミルクパン粥を?レオルくんのご飯はちゃんと作るからね」
「まぁま、おねつでう~んう~ん」
「レオルくん?」
「まぁま、くるしい」
「そうだね。レオルくんの言う通りだね」
「だかられお、まぁまといっしょのたべるの!」
「レオルくん・・・」
レオルナードはこう言いたいのだろう。
紗雪は熱で魘されているから苦しいはずで粥くらいしか食べる事が出来ない。
家族であれば同じ料理を食べるのが当然ではないのか?
だから自分もミルクパン粥を食べるのだと。
「そうだな。俺達は家族だから同じ料理を食べるのが当然だよな・・・」
紗雪もだがレイモンドもまた、病人は病人が食べ易い料理を食べるのが当然で元気な人も病人と同じ料理をという発想がなかったのだ。
「レオルくん。レオルくんとパパの分のパンも千切って欲しいな」
「あいっ!」
父親と一緒に料理を作っている事が嬉しいのか。
一日も早く母親が元気になって欲しいという願いを込めているのか。
或いはその両方か。
(フォレストベアのアルフィーさんから分けて貰ったゴールデンハニービーの蜜を入れるかな?)
そんなレオルナードを微笑ましく思いながらレイモンドは息子が千切ったパンを、温めた牛乳が入っている鍋に入れると弱火でコトコトと煮込んでいく。
2
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる