カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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70.エルフによるカフェ・ユグドラシル買収騒動-1-

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 個人差はあるだろうが、日本では一歳を過ぎた辺りで卒乳するのではないだろうか。

 キルシュブリューテ王国では───というよりこれは他国にも言える事だが、赤子への授乳は一般的に四歳くらいまでだ。

 紗雪もそれに従い、離乳食を食べるようになっているが、一歳になってから数ヶ月が経っているレオルナードに乳を含ませていたりする。

「レイモンド?どうかしたの?」

「見惚れてたんだ。紗雪がレオルくんに乳を与えている姿に・・・」

 愛情に満ちた瞳で我が子を見つめている紗雪の姿に何か神聖なものを感じていたのだと、夫として、父として、男としての色を含んだ笑みをレイモンドが浮かべる。

 そのような言葉を真顔で言われた事で何だか嬉しいような・・・恥ずかしいような気分になってしまった紗雪は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

「レオルくん、大きくなれよ・・・」

 そう言ったレイモンドが紗雪の乳を含んでいるレオルナードの柔らかい頬を指先で突く。










「レオルくんはお昼寝の時間だから、目を覚ますのは夕方になるかならないかの頃かな?」

 乳を飲んだからなのか、紗雪の胸の鼓動を聞いて心地よくなったからなのか、眠たくなってしまったレオルナードをベッドに寝かせたレイモンドがリビングのソファーに腰を下ろす。

「ご苦労様。レイモンド、お茶の時間になるけど何が飲みたい?」

「杏仁茶がいい」

「分かったわ」

 杏仁茶は杏の中にある【仁】という種子の核を粉末にしたもので作るのだが、紗雪は杏の実を市場で売っているのを見た事があっても杏の種が売っているのを見た事がない。

(杏仁パウダーがあれば杏仁豆腐と杏仁茶をメニューに加えられるのだけど・・・。でもカフェ・ユグドラシルの雰囲気にそぐわないから杏仁豆腐をメニューに加えるのは止めた方がいいかしら?)

 杏仁豆腐を家族と友人に振る舞うにしても、まずは杏の種が欠かせない。

 これもグスタフとアルベリッヒに要相談と思いながら、紗雪はネットショップで杏仁パウダーを購入すると杏仁茶を作り始める。










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