カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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69.ブラックソルトとオムライス-8-

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 「大きな商会であればブラックソルト・・・黒い岩塩を扱っているかも知れない、か」

 紗雪から話を聞いたレイモンドは考える。

「ロードクロイツの大きな商会って確かリカード商会よね?」

「ああ」

 紗雪の言葉にレイモンドが、そうだと答える。

 リカード商会とはロードクロイツに拠点を置く、他国から輸入している商品を売っている大店である。

 現代風に考えれば高級感が漂う海外のブランドショップやセレブ御用達の店であろうか。

 セレブ御用達の店だからと言っても欲しい物の為に貯金さえすれば庶民でも買えるお手頃な商品を扱っているのでそこまで敷居が高い訳でもないが、庶民の目から見ればそこはかとなく漂っている高級感に足を踏み入れるのに躊躇いを覚える店というのも確かだ。

「今度の定休日に俺がリカード商会まで赴いて黒い岩塩が売っているかどうかを確認してくる」

「私も一緒に行きましょうか?」

「いや、これは店長である俺の仕事だ。俺がリカード商会に行っている間、紗雪にはやって欲しい事があるんだ」

 実は・・・

「分かったわ」

 新たな仕入れルートを開拓するのも店長の役目なのだと告げると、夫の言葉に同意を示すかのように紗雪は笑みを浮かべる。






 結論だけを述べると、リカード商会では黒い岩塩を扱っていたのでレイモンドはそれを手に入れる事が出来た。

 と言うより、会頭がカフェ・ユグドラシルに何度も食べに行っているのでレイモンドの料理の腕が確かな事を知っているからだ。

「お帰りなさい、レイモンド」

「ぱぁぱ!」

「ただいま。紗雪、レオルくん」

「疲れたでしょ?今からコーヒーを淹れるわね。レオルくんには温めの牛乳を用意するからね」

 今はコーヒーよりもミルクティーを飲みたい気分だとよちよち歩きでやって来たレオルナードを抱っこしたレイモンドが伝えると、分かったとだけ言った紗雪は夫にミルクティーを入れる為にキッチンへと向かった。





「美味い・・・」

 茶葉から煮出した紅茶だけだとさっぱりした口当たりだが、牛乳と一緒に煮込んだ事でコクと優しい甘さがレイモンドの口の中に広がる。

(牛乳は温めると膜が出来るように豆乳も膜が出来たはず。その膜が湯葉だったか?豆乳と湯葉を使えば半熟卵やスクランブルエッグの再現が出来るかも知れないな・・・)

「バニラビーンズの莢を入れている砂糖を使うとバニラの香りが鼻を突き抜けて行くな」

「まぁま!うまっ!」

「誉めて貰えて嬉しいわ」

 レイモンドがリカード商会に行っている間、二人で遊んでいたのだけど自分達の真似をして掃除をしたり、料理を作っているレオルくんが可愛かった~♡

 掃除をしたり、料理を作っているレオルくんを俺も見たかったな~





 楽しい時間は早いと感じるように、リビングでほのぼのな親子の会話をしていたレイモンドが何気なく窓に目を向けると、空が茜色に染まっている事に気付いた。

 今日の夕食のそぼろ丼と明日の賄いのスクランブルエッグは試食を兼ねているので自分が───と言っても黒い岩塩を使った料理を作ると言ったレイモンドはキッチンで肉と卵を使わない丼を作り始める。









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