カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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閑話6・夏のバイト-11-

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 「結論から申し上げますと、女将さんは二年前に事故で死んだ娘さんを蘇らせてしまいました」

 「貴女達は女将さんが娘さんの生け贄・・・いえ、餌に選ばれた故に仲居として雇ったのでしょう。今の貴女達は死んだ女将さんの娘さんと同じ年頃ですから」

 「「「死んだ娘さんが蘇った?餌?」」」





 荒唐無稽な宗清と尊清の言葉に真由美と涼香、そして芳恵が間の抜けた声を上げて驚く。ちなみに紗雪はというと、英俊が用意してくれた冷たいお茶を黙って啜っているだけである。

 「漫画とかだったら【泰山府君の祭】というのがあるけど、篁 雅臣が誰かを犠牲にして後に友となる人物を生き返らせていたよね?」

 「CSで見た映画やお父さんが持っている漫画では確かそういう場面があった。でも実際は健康とか長寿を祈る呪文?祝詞?儀式だっけ?とにかくそんな感じじゃなかったっけ?」

 「蘇生術って言うの?漫画やゲームでは、誰かを犠牲にしなくても自分のMPを消費して死者を簡単に生き返らせる事が出来るチートキャラが居るよね?」

 「ゲームでは戦闘中にHPが0になったキャラを、教会の神父さんが何か呪文を唱えて生き返らせるのよね」

 「それは漫画とかだからOKであって実際はそんな事出来る訳ないじゃん!それと女将さんが娘さんを生き返らせたのとどう繋がる訳?」

 「事の起因は今から四百年以上前・・・世に言う戦国時代まで遡ります」

 宗清は語り始める。










※この話に出てくる泰山府君の祭は2つあります。
1つは健康や長寿を祈る宮廷祭祀用。
正式な儀式などは伝わっていないものの、名前だけが流布したというか広まってしまったというか・・・。
そこから後世の人達が色々と想像を広げた結果、泰山府君の祭が死者蘇生術として陰陽師を主人公にした漫画やゲームなどで使われるようになりました。
もう1つは死者蘇生。
こっちの方が正式な泰山府君の祭で、紗雪であれば・・・というか霊剣・蜉蝣の使い手になれるくらいの霊力がないと出来ません。
それが事実だと知ってしまったらお偉いさん達が『Aさんを生き返らせて!Bさんを生き返らせて!』と篁家を頼るだろうし、状況によっては権力で脅すのが火を見るよりも明らか。
名前だけが広まってしまったおかげで世間の人達は『漫画やゲームとかでは生き返らせるけど、実際は健康や長寿を祈る儀式』と泰山府君の祭を受け取っています。








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