378 / 451
閑話6・夏のバイト-7-
しおりを挟む「お話は真由美さんから伺っております」
到着した四人と健太を瑞宝寺の副住職である尊清が出迎え、庫裡へと案内する。
「真由美さんの話によれば立ち入り禁止の場所に足を踏み入れてしまった芳恵さんと紗雪さんには、そこに居た霊が見える。そして一時的とはいえ紗雪さんのお祓いで見えなくなったとの事ですが、お二人には今も見えていますか?」
「見えるというより・・・何かを引っ搔いているような音が聞こえています」
ひぃっ!
「元の場所に戻したというのに自分が見える人間が居たという事実が嬉しいのでしょうね。結界を張っている本堂には踏み込めないけど周辺を三体がうろついていますよ」
短い悲鳴を上げる芳恵と紗雪の言葉に恐怖を感じた真由美と涼香がヒシっと抱き合う。
「・・・・・・これは思っていたよりも深刻な事態になっていますね。今から四人の御祈祷を始めましょう」
紗雪と芳恵の話を聞いた尊清は四人を堂へと連れて行く。
・堂に籠っている間は一言も言葉を発してはいけない
・飲み食い禁止
・眠ってはいけない
・懐中電灯や蝋燭のように堂を照らす灯になるものの持ち込み禁止
・スマホの持ち込み禁止
・朝になるまで外に出てはいけない
「これだけは絶対に守って下さい。それと、もしどうしてもトイレが我慢出来ないのであればこれで済ませて下さい」
尊清は四人に防災グッズの一つである非常用トイレを手渡す。
「紗雪さん、貴女にお聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「何でしょう?」
「貴女の一時的なお祓いで芳恵さんに憑いていた三体の霊は彼女から離れた。その気になれば成仏させる事が出来たのではありませんか?」
「それはどうでしょう?仮に私が成仏させたとしても此度の件は根本的な解決にはなりませんし、新たな犠牲者を出すのは火を見るよりも明らかです。術者を潰す。それだけが被害を最小限に抑え且つ新たな犠牲者を生まない唯一の手段です」
「・・・・・・確かにそうですね。私達は芳恵さんに憑いている三体を祓う事に全力を尽くします」
ですから紗雪さん。貴女が三人を護って下さい
「私に三人を護れるかどうか分かりませんが・・・いざという時はもう一度私が祓いますよ」
尊清にそう答えた紗雪は真由美達と共に堂へと籠もる。
0
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる