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閑話6・夏のバイト-6-
しおりを挟む「約束の期限まで一ヶ月は残っているけど、仕方のない子達だね~」
「君達、辞める時は一ヶ月前に伝えるのが社会のルールってもんだよ?」
今日付けで仲居のバイトを辞めるという紗雪と芳恵の言葉に、オーナーこと浜田 健太と健太の妻である女将こと安子は呆れ果てた声を上げる。
社会人としては正論だけど何の関係もない人間を、自分の娘を生き返らせる為に生け贄にしようとしている二人にだけには言われたくないと心の中で毒づきながらもバイトを辞める許可を貰った。
「今日までもバイト代を用意するから、その間に自分達が使っていた部屋の掃除をしとくんだよ」
「分かりました」
部屋の掃除といっても休憩時間にやっていたし、荷造りもしているのでそんなに時間はかからない。
安子に頭を下げた紗雪はお祓いに行く準備をする為に部屋へと戻る。
「真由美、涼香。今からお祓いか祈祷をしてくれそうな神社かお寺が見つかった?」
「うん!皐月楼から車でニ十分くらいの場所に在る瑞宝寺だよ」
「タクシーは?」
「呼んでる。後十分か十五分くらいしたら来るって!」
「早く!早く行きましょうよ!!」
こんな場所から一刻も早く出て行きたいとばかりに芳恵が急かす。
「そ、そうね!芳恵さんの言う通りね!!」
命の危機が迫っているからなのか、三人は我先にと部屋を出て行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
安子から給料を貰った四人は涼香が呼んだタクシーに乗って瑞宝寺へと向かっていた。
「お~い」
四人が乗っているタクシーの後を走っている一台の車がクラクションを鳴らす。
「あれは皐月楼のご主人じゃないか」
健太に気が付いたタクシーの運転手が車を停める。
「君達が駅とは反対の方に走っていくから気になって追いかけて来たんだ。瑞宝寺に行くんだろ?」
「何で分かったんですか?」
去年バイトに来ていた女の子も急に辞めたいと言い出した事と駅ではなく瑞宝寺へと向かったから、これは何かあると思い追いかけて来たのだと、車から降りた健太が涼香の問いに答える。
「オーナー、去年バイトに来ていた女の子はどうなったんですか?」
「・・・・・・どうなったのかは知らないな」
「・・・・・・そうですか」
「私も君達に同行していいかい?」
四人の返事を聞く前に健太は瑞宝寺へと車を走らせる。
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