カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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閑話6・夏のバイト-3-

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 「ねぇ、一階の奥って今は使っていない物置なんだよね?」

 真由美が言っているのは、立ち入り禁止の看板が立っている場所の事だ。

 「そう聞いた事があるわ。当然だけどそこは従業員でも立ち入り禁止だもの。真由美、それがどうしたの?」

 予約していたそれぞれの客を部屋に案内した後、食事時間を伝える為に厨房へ向かっている真由美と顔を合わせた紗雪が尋ねる。

 「実はね・・・」

 女将が食事を今は使っていない奥の部屋に運んでいるところを何度も見かけた事を真由美が紗雪に話す。

 (・・・・・・)

 「物置は改装したのでは?例えば、義父か義母の介護の為という理由で」

 「大女将は元気だから義父の介護をしているのかと思ったけど、先代オーナーは二年前に死んでいるからそれはないって芳恵さんが言っていたから義父の介護ではないはず」

 (・・・・・・)

 「お子さんが風邪をひいたとか、大怪我をして自宅療養中とかじゃないの?」

 「それがね・・・オーナー夫妻にはお子さんが居ないのですって」

 これも先輩である芳恵さん情報である。

 「・・・・・・ねぇ、奥に誰が居るか、見てみない?」

 「駄目よ。立ち入り禁止の区域に足を踏み入れるなんて許されない事だわ」

 (女将さんは私達を生け贄にしようとしているのよ。あれは血肉を好む化け物と化してしまったから女将さんの子供とは言えないけれど・・・)

 他人の心が読める紗雪は女将が何をしようとしているのか、何の為に自分達を採用したのかを分かっているが、それを打ち明ける訳にはいかない。

 真由美の提案に紗雪は不法侵入になるからやっていけない事だと注意するのだが、好奇心が勝っている彼女は聞く耳を持たなかった。

 「明日の休憩時間に立ち入り禁止の場所に忍び込むわよ!涼香にはあたしから言っておくからね」

 紗雪にそう言った真由美は一足先に厨房へと向かった。















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