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66.卵を使わないカルボナーラ-5-
しおりを挟むロードクロイツ邸の食堂のテーブルの席には当主であるグスタフと彼の妻であるアルベルディーナ、先代ロードクロイツ侯爵であるランスロットとエレオノーラ、国王であるディートヘルムとセラフィーナ、そして今回の主役とでもいうべきセフィーリアが就いていた。
今日のご飯は何だろうな~♪
彼等の表情が楽しそうなのはレイモンドと紗雪の料理の腕を知っているからだ。
そんな七人が待つ食堂に給仕達が料理を持ってくる。
「お待たせいたしました。卵を使っていないカルボナーラです」
給仕達が七人の前に二種類のパスタを置いていく。(量は一皿に半人前分盛り付けていて、セラフィーナのカルボナーラは味付けと量を子供用にしている)
「卵を使っていないとの事ですけど、どう違うのでしょうか?」
「レイモンド様が仰るには一つは豆乳、一つは生クリームとチーズでソースを作ったパスタなのだそうです」
卵は使っていないから卵アレルギーを持っている人でも食べる事が出来る料理なのだと、アルベルディーナの問いに給仕が答える。
給仕の答えに安心した七人は食事前の祈りを捧げた後、フォークを手にしてパスタを口に運んだ。
「豆乳のカルボナーラは、野菜とキノコの旨味が溶け込んでいるソースはさっぱりしているのに、黒胡椒が後を引いて食を進めていくのだな」
「生クリームとチーズで作ったカルボナーラ・・・。パスタに絡んだソースは濃厚でクリーミーで円やか。豚肉の塩漬けがいいアクセントになっているわ」
「フィーはどっちの方が好みだ?」
「あたくしは生クリームとチーズで作ったカルボナーラの方が好きです」
「そうか・・・」
いつもは食が細い孫娘が二種類のカルボナーラを綺麗に食べていく姿に驚きながらも、ディートヘルムは自分の分のカルボナーラを口に運ぶ。
「お祖父様、お城でもこのカルボナーラを食べたいです」
「それは・・・総料理長の腕次第であるな」
そんな七人が居る食堂に給仕達が食後のデザートであるチーズケーキとアイスクリームを持ってきた。
「お皿をお下げいたします」
給仕が器を下げた後、別の給仕が二種類のデザートを七人の前に置いていく。
「私の大好きなアイスクリーム♡」
「卵を使っていないというだけで、アイスクリームが雪かと見紛うばかりに白いのだな」
「このアイスクリーム・・・普段食べているアイスクリームと違ってすっきりとした味わいになっていますわ」
「ケーキには卵を使うのが私は当然だと思っていたのですよ。それなのに、卵を使わなくてもこんなに美味しいケーキを食べる事が出来るのですね」
卵が入っていないだけで味が変わるのかと、これはこれで美味しいのだと一同はレイモンドが作った料理に舌鼓を打っていた。
「・・・・・・やはりフォンリヒテル準男爵夫妻に頼んで正解であったな」
孫娘の為に卵を使っていない料理を作ってくれたレイモンドと紗雪に礼を告げたいディートヘルムは、給仕の一人に二人を呼んで来て欲しいと頼む。
暫くすると、給仕の一人がレイモンドと紗雪を食堂まで連れて来た。
「フォンリヒテル準男爵夫妻よ、此度の料理は見事であった」
「陛下のお言葉を賜り、恐悦至極に存じます」
ディートヘルムに頭を下げるレイモンドと紗雪の元に駆け寄ったセラフィーナが皆の前で言葉を告げる。
「お二人の料理、とても美味しかったの。だから・・・お祖父様とお祖母様と一緒に食べに来てもいい?」
「勿論です。セラフィーナ王女様、当店へのお越しをお待ちしております」
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