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閑話・セフィーリア-10-
しおりを挟む「レオルナード様が居ないって・・・どういう事ですの?!」
レイモンド夫妻と先代ロードクロイツ侯爵夫妻から話を聞いたセフィーリアは驚愕の表情を浮かべる。
彼等の話を簡単に纏めるとこうだ。
自分が王女と結婚となれば、王国に仕える貴族のみならず国民から不平不満が漏れるのは目に見えているし、他国からも舐められる。そして家族は白い目で見られ誹謗中傷の嵐を浴びるのは確実だ。
ローゼンタール公爵家に対して莫大な慰謝料を支払わなければならない家族が奴隷落ちするのは避けられない。
自分が原因で家族がバラバラになるのなら、いっその事居なくなった方がいいと考えたレオルナードはフォンリヒテル家を出て行ったのだという。
「そ、そんな・・・」
「セフィーリア、これで良かったのだ・・・」
もう二度とレオルナードに会えないという事実にセフィーリアは涙を流す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それからのセフィーリアはレオルナードとの妄想を日記に書くという形で自分を慰めるようになった。
婚約者との仲を深める意味でマティウスと顔を合わせる辛く苦しい日々も、日記を書いている時だけはセフィーリアの心を癒すのだ。
そして三年の月日が流れ───
セフィーリアは祈る思いでマティウスとの華燭の典を阻止して欲しいとうわさを聞き付けたレオルナードが来るのを待っていたのだが、祈りも虚しく式に参列していた両親祖父母のみならず豪華絢爛な馬車に乗って街を進む様子を嬉しそうに眺めている国民に祝福されながら二人は正式に夫婦となった。
彼女にとって苦痛でしかない夜の営みはセフィーリアに子を宿させる事になる。
「い、嫌っ!レオルナード様以外の男との間に出来た子供なんて要らない!!」
「子供を流す薬が欲しいの!!」
月満ちて子を産み落としたセフィーリアは母となったのだが、父親がレオルナードではなくマティウスという事実。
更にマティウスに瓜二つという残酷な事実は自分がお腹を痛めて産んだ息子と娘を厭う原因となる。
母性というものが芽生えなかったセフィーリアは一度として我が子達に話しかけたり抱き締める事はなかったのだ。
「レオルナード様・・・」
マティウスに触れられる度にセフィーリアの心は静かに、だが確実に壊れていった───。
心が壊れた事で公爵夫人としての役目を果たせないセフィーリアは、マティウスの判断によりローゼンタール公爵家が所有する小さな屋敷の一つに隔離された。
「見て、レオルナード様・・・。この子はあなたにそっくりでしょ?」
「いい子ね。お母様のお乳を沢山飲んで大きくなってね」
「「奥方様・・・」」
赤子の頃のレオルナードはこんな感じだったのだろうか?と思えるくらいに愛しの彼にそっくりな人形に己の乳を含ませているセフィーリアは幸せな表情を浮かべていた。
※仮に色々な問題をクリアしてセフィーリアがレオルナードと結婚したとしても、例え仕事関係であろうが自分以外の女と話をしようものなら「あたくしというものがありながら何を話していましたの!?まさか・・・浮気をしているのではないでしょうね!?」「あの女と言葉を交わすレオルナード様の姿を目にしなければいけないというのであれば・・・自ら命を絶ちますわ!」という感じで責めます。
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