カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
354 / 427

閑話・セフィーリア-2-

しおりを挟む










 セフィーリアがレオルナードと初めて出会ったのは、十四歳の時に祖父のディートヘルムと祖母のセラフィーナと共にカフェ・ユグドラシルに食事に行った時だった。

 祖父母が土産として買って来るカフェ・ユグドラシルのお菓子を何度も食べた事はあるが、ディッシュ系は食べた事がないセフィーリアは胸を躍らせながら並んで待っていた。

 「いらっしゃいませ。窓側のテーブルに案内いたしますね」

 そんなセフィーリア達を案内したのが、店の手伝いをしているレオルナード(11)だったのだ。

 (な、何て素敵な御方・・・)

 シャツにズボン、三角巾という給仕のシンプルな服装なのに、レオルナードが着ていると様になり有名なデザイナーが作った高級ブランド服に見える。

 それに纏っているオーラとでも言えばいいのだろうか。

 貴族令息や王子といっても通用するレベルだったのだ。

 「カフェ・ユグドラシルでお出し出来る料理が書いている冊子です。ご注文が決まりましたらお呼び下さい」

 「は、はいっ!」

 自分の婚約者であるマティウス(14)など足元にも及ばないレオルナードの外見と雰囲気に心惹かれてしまったセフィーリアは上擦った声で返事をしてから受け取った冊子を開く。

 (卵を使っていないディッシュとデザートを頼みたいのですけど・・・)

 冊子に目を通しているセフィーリアには、どの料理に卵を使っているのかどうかが分からない。

 (そうですわ!)

 彼と言葉を交わす絶好のチャンス!と思ったセフィーリアは別のテーブルに料理を運んでいる給仕に自分達のテーブルに来て欲しいと声を掛けるのだが、来たのはレオルナードではなく女給仕だった。

 「貴女などお呼びではありませんわ。今、料理を運んでいる彼を呼んで下さい」

 (ひぃぃぃっ!)

 魔王なオーラを纏っているセフィーリアにドスの効いた声で喧嘩上級者のメンチ切りされてしまった女給仕は、恐怖でガタガタと震えながらもレオルナードをセフィーリア達が座っているテーブルに来て欲しいと声を掛ける。

 「お客様?彼女がお客様に何か無礼を?」

 (こうやって近くで見ると、ハイレベルな美形だわ)

 「いえ!あたくしは、その、え~っと・・・」

 将来イケメンになる事が確実のレオルナードに見惚れてしまったセフィーリアは言葉に詰まってしまうが、緊張してしまったのか、彼女は『卵を使っていない料理が何なのか?』という問いではなく別の言葉を紡いでしまう。

 「け、けけけけけけ」

 「け?」

 「けけけけけ結婚!あたくしと結婚!!是が非でも結婚して下さいませ!!!」











しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:390pt お気に入り:7,323

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,905pt お気に入り:1,650

一途な令嬢は悪役になり王子の幸福を望む

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,033pt お気に入り:1,709

俺が生まれつき最強な件について。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,701pt お気に入り:1,363

離縁するので構いません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:60,626pt お気に入り:1,546

【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,899pt お気に入り:2,529

王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,088pt お気に入り:2,675

処理中です...