カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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65.卵を使わないチーズケーキとアイスクリーム-1-

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 「卵を使わない料理・・・。随分と難しい話ね」

 (洋菓子は基本卵を使うから避けた方がいいわね。和菓子だったらいけると思ったけど、カステラ、どら焼き、黄身餡、艶のある饅頭、カスタードクリームが餡となっている茶巾絞りは卵を使っているから却下だわ)

 卵アレルギーであるセフィーリアの為に、卵を使わない料理を作って欲しいとディートヘルムとセラフィーナに頼まれた紗雪は難色を示す。

 レイモンドとレオルナードが卵アレルギーだったら紗雪は家族の為に卵を使わない料理を作るのだが、ディートヘルムからの依頼は自身の孫であるセフィーリアの為だ。

 どう考えても王宮に仕える料理人の役目のような気がするのだが、孫を思うディートヘルムの気持ちも分からなくもない。

 「レイモンド、セフィーリア王女が食べたい卵を使わない料理って何でもいいのかしら?」

 「ああ。卵を使っていなければ何でもいいと思うが、やはり幼い子供に合わせた方がいいのだろうな」

 二人は腕を組んで悩む。

 「・・・・・・紗雪、俺達はメティス王国の国王夫妻の為に卵と牛や山羊の乳を使わないデザートを作ったよな?」

 「ええ」

 「その時は宗教的な理由と、春なのに暑いから冷たいわらび餅にしたけど、陛下の話を聞いた時に思ったんだ」

 カフェ・ユグドラシルでもアレルギーと宗教の教義に対応した料理を加えるべきではないのかと

 「レイモンドと比べたら私は料理人としてだけではなく人としても失格だわ。聖人ってレイモンドのような人を言うのかも知れないわね」

 家族の為にしか卵を使わない料理を作ろうと思わなかった自分に対し、レイモンドはアレルギーを抱えている人でも食べる事が出来る料理を作ろうと思っていたのだ。

 「俺は、俺が作ってくれた料理を食べてくれた客が嬉しそうに笑っている姿を見るのは嬉しいけど聖人ではないぞ」

 紗雪とレオルナードの為であれば純粋な思いで作るのだが、妻が住んでいた元の世界の料理を広めたいという考えを念頭に置いて料理を作ろうとしているという下心がある人間を聖人と言わないと、レイモンドが笑みを浮かべながら紗雪に返す。

 「今から作れば・・・食べる事が出来るのは明日だな。紗雪、試食してくれないか?」

 「それは構わないけど、試食はメアリアとキャスリンにもお願いして意見を聞きたいと思っているのだけどいいかしら?それと、レイモンドはセフィーリア王女の為に何を作るつもりなの?」

 「ああ。実はチーズケーキとアイスクリーム、セフィーリア王女のように卵アレルギーを抱えている人達、信仰上の理由で肉や魚を口に出来ない人達の為の新メニューとして二種類のカルボナーラを作ろうと思っているんだ」

 「チーズケーキ?卵を使わないチーズケーキとアイスクリームは何となくイメージ出来るけど・・・カルボナーラってどんな感じになるのかしら?」

 クリームパスタのような感じになるのかしらね?

 紗雪はチーズケーキとアイスクリーム、カルボナーラを作った事があっても、卵を使わずに作った事もなければ食べた事もないのだ。

 楽しみだとレオルナードを抱っこしながら微笑んでいる紗雪の期待に応えねばなるまい。

 「だぁ!だぁ!」

 「もちろん、レオルくんにも試食をお願いするからね」

 そう言ったレイモンドは楽しそうに笑っているレオルナードの頭を優しく撫でる。













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