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64.国王夫妻の食事。そして・・・-4-
しおりを挟むしっかりと焼いた鯛の皮はパリッと、身はふっくらとしている。ほんのりと口の中に広がるのは塩と胡椒の風味。
少し歯応えのあるパスタに絡むのは旨味が感じる醤油ソース。
アスパラガスは甘味があってシャキシャキとしている。
(美味い・・・。王宮でもフォンリヒテル準男爵が作った料理の再現を出来れば良いのだが、こればかりは無理だな・・・)
今の自分はカフェ・ユグドラシルの料理を食べに来た客なのだ。
考えている事を振り払ったディートヘルムはパスタを口に運ぶ。
ジャイアントブラックバイソンの肉は柔らかいのに、しっかりと感じる肉の食べ応え。
バターのコク、砂糖か蜂蜜を混ぜているのだろうか。
甘味とレモンの爽やかな酸味を感じる醤油ベースのソースがセラフィーナの食欲をそそる。
(フォンリヒテル準男爵夫妻を料理人として仕えさせる・・・のは無理ですけど、せめてカフェ・ユグドラシルを王都で経営して欲しかったですわ)
王都の物価は高いので、目の前にある料理は最低でも三~四倍の値段で提供という形になり、カフェ・ユグドラシルの料理が平民では手の届かなくなるのは目に見えている。
(あちらを立てればこちらが立たず・・・難しいですわね)
そんな事を考えながらセラフィーナはステーキと添えられている滋味を感じる夏野菜、付け合わせのパンを綺麗に平らげていく。
「お皿をお下げしますね。後で食後のデザートをお持ちしますから少々お待ち下さい」
ディートヘルムとセラフィーナが食べ終えたタイミングを見計らったメアリアが皿を下げる。
「お待たせいたしました」
暫く待っていると食後のデザートとして注文したミルクレープと紅茶、塩バニラのアイスクリームとカフェオレを持ってきた。
ディートヘルムにとってデザートがメインなのだ。
「クレープ生地の黄色とクリームの白を重ねただけなのに、何と美しい断面なのだ・・・」
自分にとって初めて目にするスイーツを、ディートヘルムが子供のように瞳を輝かせて見つめている。
王宮でも食後のデザートとしてクレープを出す事があるが、生クリームかカスタードクリーム、フルーツジャムと果物を一枚のクレープ生地に包んだものが主である。
フォークで食べ易い大きさに切ったミルクレープを口に運ぶ。
もっちりとした生地の食感に濃厚だけどくどくない甘さのクリームが一つになったミルクレープは、クリームと果物を包んだクレープとは違った味わいがあった。
さっぱりとした紅茶を飲めば口直しとなり、またミルクレープの甘さを堪能するという行為を繰り返した。
「塩のしょっぱさがアイスクリームの甘さを引き立てる。成る程、アイスクリームにはこういう食べ方もあったのですね」
ミルクレープと塩バニラのアイスクリーム
ディートヘルムとセラフィーナは食後のデザートを思う存分に楽しむのだった。
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