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63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-20-
しおりを挟むいよいよ本日のメインディッシュ。
給仕達が豆腐ステーキをテーブルに置いていった。
「これは・・・肉、でしょうか?」
茶色いソースがかかっている皿に乗っているからなのか、ヴァージルとフローレンスには何かの肉を焼いたとしか見えないでいる。
「ヴァージル陛下、フローレンス王妃。フォンリヒテル準男爵夫妻はルミナエル教の教義を念頭に置いて本日の料理を用意したのですから、動物や魔物の肉を使うはずがありませんわ」
そうですね?フォンリヒテル準男爵夫人
「はい。この料理は豆乳を固めて出来る豆腐で作った豆腐ステーキというものです」
豆乳バターで焼いてから醤油をかけたのだと、セラフィーナに問われた紗雪が答える。
豆腐、豆腐で作ったスイーツはキルシュブリューテ王国で徐々に広まっているが、豆腐ステーキはなかったはずだ。
豆腐ステーキを誰よりも早く食べられるという事にちょっぴり優越感を覚えたディートヘルムとセラフィーナは一口で口に運べる大きさに切ったそれを食べる。
「こ、この食感は・・・肉!?」
「豆腐とは柔らかい食べ物であるはず・・・!フォンリヒテル準男爵夫人、これはどういう事なのだ?!」
「実は・・・」
冷凍ボックスで凍らせた豆腐を解凍。それからジャガイモ澱粉?を塗して焼いたのだと、紗雪が豆腐ステーキの作り方を話す。
肉のような食感でありながら肉ではない。
それは一体どのような料理なのだろうか?
ヴァージルとフローレンスも自分達にとって未知な豆腐ステーキを食べてみる。
「「!?」」
塩辛さの中に甘さとコクを感じる醤油というソースに、柔らかいはずなのに凍らせた事で適度に噛み応えのある豆腐。
肉というものはこのような食感をしているのだろうか?
初めての食感に何と言えばいいのか分からないヴァージルとフローレンスであったが、醤油と豆腐の相性は抜群で美味しいものは美味しい。
こんなに満足感を覚えた晩餐は初めてだと思いながら二人は皿に乗っている豆腐ステーキ、添えている春野菜のソテーを食べていく。
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