326 / 465
63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-12-
しおりを挟む「肉・魚・卵のみならずバターやチーズといった乳で作ったものを使わずにメティス王国の国王夫妻を持て成す料理を作る・・・か」
「ルミナエル教を信仰しているかの国は肉や魚等を口にせぬ故に随分と難しい話じゃのう・・・」
レイモンドから話を聞いたクリストフとソフィーは難しい顔つきになっていた。
「レイモンド殿、サユキ嬢。そなた達が晩餐会の時に出そうとしている料理を儂達に食べさせてくれぬか?」
「第三者である妾達の目線であれば、そなた達では見えなかった光明が見えるかも知れぬからの」
((何か物凄く期待に満ちた目で見ているのですけど!!!))
口ではこう言っているが、実は新しい料理を食べたいというオーラを全身から溢れさせているものだから、椅子から立ち上がった紗雪は厨房に行って二人分の豆腐ステーキを作り始める。
待つ事暫く
「これがあの豆腐なのか!?」
「豆腐は柔らかい食べ物だと思っていたのじゃが、調理法次第では肉のようにもなるのじゃな」
厨房で紗雪が作った人参のポタージュスープと豆腐ステーキを食べたクリストフとソフィーが思わず驚きの声を上げる。
「サユキ嬢が登録している顆粒ブイヨンか顆粒コンソメを使えたら、メインディッシュである豆腐ステーキとやらに肉の風味を感じる事が出来ると思うのじゃが・・・」
「後はソースにバターか生クリームを加えたら豆腐ステーキとやらが濃厚な味になって食べ応えが出るのではないのか?」
「クリストフ陛下、ソフィー王妃。バターを使えば味は濃厚になりますが、牛・山羊・羊といった家畜の乳から作るのですから無理ですよ」
「妾は牛・山羊・羊の乳で作ったバターか生クリームではなく穀物等で作ったバターがないのかという意味で言ったのじゃ!サユキ嬢、異世界には例えば・・・そうじゃな。ひよこ豆から作ったバターや生クリームはないのか?」
「ひよこ豆から作ったバターなんてあるはずがないじゃろうが!!」
(えっ?バターを豆から作る?)
「待って下さい!クリストフ陛下、大豆・・・正確に言えば豆乳から作ったバターがありました!」
ソフィーの一言で豆乳から作ったバターにチーズ、クリームがあった事を紗雪は思い出す。
(豆乳からバターを作るには豆乳以外に必要な材料は確か・・・ココナッツオイルにオリーブオイル、それから塩にレモン汁だったはず。あれ?リンゴ酢だったかしら?)
「豆乳からバターが作れるという事は・・・チーズと生クリームも作れる、のじゃな?」
「はい。ですがクリームに関しては生クリームではなくホイップクリームと呼んだ方が正しいのかも知れません」
動物性油脂のみで作ったクリームを生クリーム、植物性油脂だけ、或いは動物性油脂と植物性油脂が混じっているクリームをホイップクリームなのだと紗雪が教える。
「それ等が広まれば料理の幅が広がりそうじゃし、晩餐会の時に出す料理にも使えるじゃろうな」
「レイモンド殿!サユキ嬢!」
「分かっております。豆乳で作ったバターやクリームを使った料理の試食をお願いいたします」
自分達にとって未知な食材で作る料理に期待するクリストフとソフィーに思わず苦笑を浮かべるレイモンドと紗雪であった。
0
お気に入りに追加
426
あなたにおすすめの小説


婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話
下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。
主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。
小説家になろう様でも投稿しています。

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる