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63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-4-
しおりを挟む冬になれば温かいものが食べたくなるのが人情というものである。
シチュー、グラタン、スープ
底冷えするような寒さを感じるようになってからは温かい料理の注文が多くなったので、カフェ・ユグドラシルではシチューやグラタンに使うホワイトソース、フルーツグラタンに使うカスタードクリームも普段より多めに作るようになっていた。
紗雪から注文を聞いたレイモンドはオーブンを温めている間に、パンを器にしたフルーツグラタン作りに取り掛かる。
パン工房から仕入れているパンの上の部分を切ったら中身をくり抜く。
ちなみにくり抜いた中身もフルーツグラタンに欠かせない食材である。
くり抜いた中身を適当な大きさに切った後それをブレッドボウルに入れると、今朝に作り置きしておいたカスタードクリームを加える。
(砂糖とバニラエッセンスを使わないカスタードクリームであれば離乳食に使えるな)
レオルナードに食べさせる離乳食の事を考えつつ、カスタードクリームを入れたブレッドボウルに苺・ミカン・林檎といった季節のフルーツを盛り付けると温めておいたオーブンで焼いていく。
十分後
パンを器にしたフルーツグラタンの出来上がりである。
「紗雪、フルーツグラタンとコーヒーが出来た」
「はい」
レイモンドから注文した料理が出来た事を聞いた紗雪は、それをデイビッドが居るテーブルへと持って行く。
「お待たせしました。ご注文のフルーツグラタンとコーヒーです」
「これは・・・何とも美しいデザートではないか!」
苺の赤、ミカンのオレンジ、林檎の白、カスタードクリームの黄
四つの色が鮮やかで美しい、タルトを思わせる彩りのパンにデイビッドは思わず声を上げる。
神よ、あなたの慈しみに感謝してこの糧をいただきます
食事前の祈りを捧げたデイビッドはフルーツグラタンを食べ始める。
外側はカリッとしているのに、絹のように柔らかくしっとりとしたブレッドボウル
鼻から抜けるのは魅了して止まないバニラの香り
口に広がるのはカスタードクリームの濃厚な甘味と果物の柔らかな酸味
(これはパンであるはずなのに・・・まるでケーキかタルトを食べているかのようだ!)
パンをスープに浸す、パンに塗るのはバターかジャム或いはペースト、パンに乗せるのは肉か魚だと思っていたが、こういう風な食べ方もあるのだと思いながらデイビッドはフルーツグラタンを綺麗に平らげていく。
「う、美味かった~。あ゛っ・・・」
煮出しコーヒーが注いでいるカップに口を付けたその時、自分が#カフェ・ユグドラシル__ここ__に来た目的を思い出したデイビッドは料理を運んでいる紗雪に『二人に大事な話がある』と告げる。
「・・・・・・ティータイムに入る前であれば客足が少なくなりますので、その時でよろしければ」
「・・・感謝する」
紗雪の言葉に礼を告げたデイビッドは、その時が来るのを待つ為コーヒーを注文した。
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