カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-2-

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 (あ、あたし何も悪い事してないんですけど!!!)





 もしかして切腹を命じられちゃうとか!?

 それとも何とかという戦国大名のように、あたしの髑髏を盃にしてワインを飲むとか!?

 その為にあたし殺されちゃうの!?

 あの陛下だったらそれくらいやりかねんわな

 側近のデイビッドさん!あんただけが癒しです!





 外見のみならず声までもが何とかというゲームに出てくる第六天魔王を彷彿とさせるディートヘルムを前にカーテシーをしながらマスミはそんな事を考えていた。

 「ローゼンタール公爵夫人。そなたを王宮に招いた理由だが、事は急を要するのだ」

 「ひゃ、ひゃい!」

 第六天魔王のように威厳と威圧感のある声でディートヘルムに話しかけられたマスミの心は、一刻も早く謁見の間・・・というか王宮を出て公爵邸に帰りたいという思いで占められていた。

 (こ、怖ぇーーーっ!超怖ぇよ!目の前に居るのが魔王ではなくイケメンのエセルバート王太子だったら良かったのに!!)

 自分の事を魔王とか第六天魔王だと思われている事など知らないディートヘルムは、マスミに王宮に招いた理由を語る。

 「に、肉・魚・卵・乳を使わない料理を晩餐会に出す?!え゛っ?それってありなの!?」

 ディートヘルムの話を聞き終えたマスミは、自分の目の前に誰が居るのかを忘れて思わず間の抜けた声を上げて驚いてしまっていた。

 (晩餐会の料理って確か・・・前菜はテリーヌとかでメインは肉か魚、デザートはアイスクリームやケーキやタルトといったものだったような・・・)

 日本に居た頃にネットで見たメニューがそんな感じだったはずだ。

 味付けが濃くて甘過ぎる事を除けば、キルシュブリューテ王国の晩餐会に出てくる料理も似たようなものであったことを思い出す。

 「それってどう考えても無理・・・いや、待って下さい!」

 日本には肉・魚・卵・乳を使わない精進料理というものがあった事を思い出したマスミが声を上げる。

 「ショウジン料理?ローゼンタール公爵夫人よ、それはどのようなものなのか教えてくれぬか?」

 「え~っとですね・・・」

 肉や魚といった動物性の食材を使わずに作った料理なのだと、魔王なオーラを纏っているディートヘルムの問いにマスミがしどろもどろになりながらも何とか答えた。

 「ローゼンタール公爵夫人はショウジン料理とやらを作る事が出来るであろうか?」

 「む、無理無理!無理です!!」

 この世界にはスーパーがないので精進料理を作るのに必要な食材を揃える事が出来ないし、何より自分は料理がまともに作れないのだと、マスミはディートヘルムの命令を断固として拒否する。

 肉・魚・卵・乳を使わずに見た目も美しい料理を作るなど、家事全般が苦手なマスミにとって不可能としか言いようがなかった。

 「恐れながら陛下」

 それまで黙って二人の会話を聞いていたデイビッドがディートヘルムに声を掛ける。

 「フォンリヒテル準男爵夫妻に相談すると言うのは?」

 デイビッドの言葉にディートヘルムは考え込む。

 レイモンドの料理の腕は王宮に仕えさせたいレベルだし、紗雪は彼の料理の師匠でもある。

 それに何となくだが紗雪の方が精進料理についてマスミより詳しく知っていそうな気がするし、あの気位の高いエルフでさえも唸らせる料理を作る事が出来るレイモンドであればメティス王国の国王夫妻の舌を満足させられそうな気がする。

 単なる勘でしかないけど。

 メティス王国の国王夫妻を持て成す料理の事を聞く為、ディートヘルムはデイビッドにロードクロイツまで赴きレイモンドと紗雪に此度の事を話した上で、精進料理を作るように説得を命じるのだった。

 「そうだ。ロードクロイツに行くのであれば余への土産としてカフェ・ユグドラシルの期間限定のスイーツを所望する」

 「・・・・・・・・・・・・」

 ディートヘルムの言葉を聞いたデイビッドは思った。

 (この人・・・見た目が魔王なのに甘いものに目がないな・・・・・・)












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