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63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-1-
しおりを挟む「肉・魚・卵・乳を使わずにルミナエル教を信仰しているメティス王国の国王夫妻を持て成す料理・・・か」
ディートヘルムは魔王なオーラを纏いながら頭を抱えて悩んでいた。
それはもう心の底から。
ルミナエル教というのはラクシュという女神を主神として崇めているメティス王国の国教である。
そんなルミナエル教の戒律の一つに不殺生戒というものがあった。
自分の為に殺生をしてはいけないという意味なのだが、何も肉や魚を口にする事を禁止している訳ではない。
だが、後の信者達や時の権力者達がそのように解釈してしまったのか。
或いは時代を経た事で言葉の意味が変わってしまったのか。
ルミナエル教の信者は肉や魚を調理した動物性食品を食べてはいけない事になっているのだ。
敬虔なルミナエル教の信者達は肉や魚だけではなく、牛や山羊といった家畜の乳に乳から作られるチーズやヨーグルトといった乳製品を口にせず、野菜・豆類・穀物・海藻から作られる食品と果物を神々に捧げ、そのお下がりを頂く。
それがルミナエル教の修行であると同時に、光の女神ラクシュに感謝の念を捧げる意味もあるのだ。
そのルミナエル教を信仰している国王夫妻に、キルシュブリューテ王国では当たり前のように口にしている肉や魚、乳製品を出せばどうなるか───。
「野菜・豆・穀物で晩餐会に出てくるような料理とデザートを作ることが出来るのか?」
スープの出汁を作る時は肉か魚を使っているし、サイドディッシュとメインディッシュには野菜を使っているがメインとなる肉か魚に添えて盛り付けている、デザートは乳と卵を使って作ったものというのが一般的だ。
どうすれば来年の春にキルシュブリューテ王国を訪れる国王夫妻を持て成せるかをディートヘルムは考える。
(・・・・・・・・・・・・)
「ローゼンタール公爵夫人であれば肉・魚・卵・乳を使わない料理を知っているのではないだろうか?」
味と食感はともかく、ジャガイモをオリーブオイルで揚げるフライドポテトは手の込んだ料理を口にしてきたディートヘルムにとって斬新であり衝撃であった。
フライドポテトを知っているマスミからメティス王国の国王夫妻を持て成す料理のヒントを掴めるかも知れない。
ディートヘルムは側近の一人にマスミを王宮に招くようにと命じるのだった。
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