カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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62.豆腐-5-

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 アウグスタスの言葉の意味を理解出来ないレイモンドと紗雪は互いに顔を見合わせる。

 三柱曰く

 耐久性に優れていながら柔軟性があって、魔力と霊力とも相性が良い金属であるミスリル。

 そのような金属が採掘出来る場所は限られているからなのか、地上ではミスリルは希少であり非常に高価。

 神を除く種族であればミスリルで問題ないが、紗雪の子供は遥か昔に滅びてしまった半神半人に近い存在。

 魔力か霊力を込めて戦っていくうちにミスリルの武器は単なる鈍らと化す。

 その度に鍛冶師に新しい武器を作って貰うとなればカフェ・ユグドラシルだけではなくレオルナードも路頭に迷ってしまい、結果、フォンリヒテル家は破滅へと向かうかも知れないのだ。

 「ママさん。あたし達は・・・いえ、あたし達だけではなくパパとママ、お姉ちゃま達もパパさんとママさんが作った料理をとても気に入っているの」

 「あたし達にとってミスリルはどこにでもある金属という認識でしかないけど、地上ではとても高価なのでしょ?坊やが原因で路頭に迷ったら、あたし達はパパさんとママさんが作る美味しい料理を食べる事が出来なくなってしまうもの」

 「要するにこれはあたし達のエゴ。だから気にしなくてもいいわ」

 神にとって人間なんてどうでもいい存在であるはずなのに、そこまで気にかけてくれるのだろうか?という疑問が出ている紗雪に三柱が自分達の思いを話す。

 「セイリオスさん、アウグスタスさん、ファルネウスさん・・・親である私達が気付かなかった点を教えて下さりありがとうございます」

 「パパさん。さっきも言ったけど、これはパパさんとママさんが作る料理を食べられなくなる事が耐えられないあたし達のエゴなの」

 「あたし達に報いたいと言うのであれば異世界の料理を広めて頂戴」

 「ママさんが作ろうとしている豆腐料理を楽しみにしているわよ」

 「分かりました」

 自分達にどこまで出来るか分からないが、やれるだけの事はやるとレイモンドが三柱に告げる。

 「パパさん、ママさん。お店が休みの日に長い時間お邪魔してゴメンなさいね」

 明日はカフェ・ユグドラシルに食べに来るとだけ告げて帰っていく三柱を二人は見送るのだった。










※ミスリル+自然に抜け落ちた三柱の爪か皮か鱗+レイモンドと紗雪の血で二人の血を引く子孫にしか扱えない神器が出来るのですが、三柱の爪とかをミスリルと合成・加工できるのは鍛冶神だけだったりします。
ただ、代を重ねる事で天女の血も薄くなるので徐々に魔力or霊力も並の人間よりちょっと秀でているくらいになっていくのですが、隔世遺伝で半神半人のように桁外れの魔力or霊力を持った子孫が産まれるのでレオルナード達が使う武器は先祖伝来になります。
レオルナードの得物は鞭、クローヴィスは長剣、レスティーナは杖。






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