カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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62.豆腐-1-

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 「レオルくん、偉い!」

 「レオルくん、凄い!」

 両手と両足を使って一階のカフェスペースから二階の自室へと続く階段を一段ずつゆっくりと登っていくレオルナードをレイモンドと紗雪が後ろから尾いてきながら見守っている。

 二人がレオルナードの背後に居るのは、我が子が階段から転げ落ちないようにする為だ。

 「偉いな、レオルくん」

 寝返りを打つようになった時も、腹ばいからずり這いをするようになった時も、つかまり立ちが出来るようになった時も感動したものだが、小さな身体で階段を登り切ったという事実は一入だ。

 二階の廊下をずり這いしながら何かをやり遂げたという満面の笑みを浮かべているレオルナードをレイモンドが抱き上げ、我が子の成長に感動している紗雪が喜びの涙を流す。

 「まんま?」

 「レオルくんが階段を登れるようになって嬉しいから泣いているの・・・」

 「紗雪・・・。そう、だな・・・」

 お腹が空いた、おむつを替えて欲しいとレオルナードが数時間置きに泣くものだから眠れない日もあった。

 夜泣きで寝不足の日もあった。

 これからは今よりもヤンチャになって目が離せないはずなのに、我が子の成長ほど嬉しいものはない。

 (・・・・・・・・・・・・)

 「ぱぁぱ?」

 「レイモンド、泣いているわ・・・」

 「えっ?」





 『か、可愛い・・・』





 紗雪の指が頬に触れた事でレイモンドは、力強く産声を上げて小さいのに確かに命の重さと温もりがあるレオルナードを初めて抱いて感極まってしまった時のように涙を流している事に気付く。

 「ああ・・・。俺も紗雪のように、こうしてレオルくんが成長しているという事実が嬉しくて泣いているんだ・・・」

 「レイモンド・・・」

 夫の言葉が嬉しかったのか、紗雪はレイモンドの頭に手を置いて撫でた。

 「さ、紗雪?」

 いい年をした大人が子供のように、いい子いい子とされるのは恥ずかしいと思いながらもレイモンドは紗雪のされるがままになっていた。

 「まんま!まんま!」

 「一番のいい子はレオルくんね」

 我が子が何を強請っているのかを察した紗雪はレオルナードの頭を撫でる。

 「今日はレオルくんが階段を登れるようになったお祝いに豆腐とジャイアントブラックバイソンの挽き肉の餡かけ、果物は林檎にしようか?」

 ジャイアントブラックバイソンとは巨大な角を持つ大型の牛の魔物だ。

 皮は服や靴等に、角はアクセサリーといった工芸品に加工される。そして肉は食べる事が出来る。ジャイアントブラックバイソンの肉は牛肉と比べたら野性味があり、脂身が少ないからなのかあっさりとしている。さしずめ霜降りの部分がない牛肉といったところだろうか。

 「きゃあぁ!」

 レオルナードは肉も魚も野菜も好きだ。だが甘い果物はもっと好きなのだ。しかし、彼が本当に一番好きなのは両親が作ってくれる離乳食である。

 紗雪の言葉にレオルナードが赤ちゃん特有の高い声を上げて喜ぶ。

 「豆腐という事はネットショップで購入したものを使うのか?」

 「違うわ。桜花かプルメリア島の大豆で作った豆腐を食べさせたいの」

 「確か一晩水に浸けてから擂り潰して絞った大豆から出てくるのが豆乳で、その豆乳で豆腐を作るのではなかったか?」










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