カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
301 / 454

61.コカトリス肉の照り焼き-5-

しおりを挟む










 「お待たせいたしました。ご注文のコカトリス肉の照り焼きとベーグルです」

 メアリアが持ってきた料理は初めて目にするものだった事もあるのか、オネエ達は声を上げる。

 「照り焼きという言葉が示す通り、コカトリス肉に照りがあるわ。このソースは魚醤に似ているような気がするけど匂いが違うわね。何をベースにしているのかしら?」

 「お兄ちゃま、照り焼きという手法で作った料理を食べてみましょうよ」

 「ファルの言う通りだわ。それとさっきも言ったけど、今のあたしは女だから【お兄ちゃま】ではなく【お姉ちゃま】って呼んで欲しいの!!」

 弟達の言っている事は尤もだと思ったのか、今は照り焼きという料理を食べる方が先だと思ったセイリオスはコカトリス肉をフォークで刺しナイフで食べ易い大きさに切った肉を口に運ぶ。

 「こ、これは・・・!」

 「トロっとしているのに照りのあるソースが魚醤に似ているからしょっぱいのかと思っていたけど、適度な辛さとしょっぱさの中にコクと甘さがあるわ!」

 「このソースは魚ではなく穀物を発酵させたものね!?」

 「パリッとするまで焼いた皮の部分、肉汁が溢れてジューシーで柔らかいコカトリス肉と照りのある甘辛いソースが絡む事で食が進むわ!!」

 「このベーグルというパン・・・もちもちと弾力があって噛み応えがあるからなのかクセになるわね」

 自分達が知っているパンは小麦粉と水を捏ねただけ、或いはそれに塩と酵母以外にバター・卵・牛や山羊の乳を使って作ったものだが、ベーグルからはバターや卵を感じなかった。

 昔のパンと似ているのに、どこか新しさを感じるベーグル。

 神代の頃にはなかった料理を三柱は心から楽しむ。

 「この店の料理、美味しかったわね。お兄ちゃま」

 「お兄ちゃまではなくお姉ちゃま!」

 「そうね。これだと他の料理も期待出来そうね」

 「今のあたしはチーズを食べたい気分だから、チーズを使った料理を注文するわ」

 「給仕のお嬢ちゃん」

 コカトリス肉の照り焼きとベーグルを食べ終えた三柱は新たな料理を注文する為、他のテーブルに料理を運んでいたメアリアに声を掛ける。

 「はい」

 「店長?シェフ?が作った料理、とても美味しかったわ。だからね、他の料理も食べてみたいの」

 アウグスタスが注文した料理は三品だったが数が多かったものだからメアリアの顔から血の気が引いていく。

 「お、お客様!?これだけの料理を出すとなれば時間を要しますが・・・よろしいでしょうか?」

 「ええ」

 「期待しているわよ」

 アウグスタスが注文した料理をレイモンドに伝える為、メアリアは慌てて厨房へと戻る。













しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

聖女のおまけです。

三月べに
恋愛
【令嬢はまったりをご所望。とクロスオーバーします。】  異世界に行きたい願いが叶った。それは夢にも思わない形で。  花奈(はな)は聖女として召喚された美少女の巻き添えになった。念願の願いが叶った花奈は、おまけでも気にしなかった。巻き添えの代償で真っ白な容姿になってしまったせいで周囲には気の毒で儚げな女性と認識されたが、花奈は元気溌剌だった!

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

【完結】婚約者は偽者でした!傷物令嬢は自分で商売始めます

やまぐちこはる
恋愛
※タイトルの漢字の誤りに気づき、訂正しています。偽物→偽者 ■□■ シーズン公爵家のカーラは王家の血を引く美しい令嬢だ。金の髪と明るい海のような青い瞳。 いわくつきの婚約者ノーラン・ローリスとは、四年もの間一度も会ったことがなかったが、不信に思った国王に城で面会させられる。 そのノーランには大きな秘密があった。 設定緩め・・、長めのお話です。

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

処理中です...