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59.厚焼きホットケーキ-4-
しおりを挟む「お待たせいたしました。ご注文のコカトリス肉の唐揚げと厚焼きホットケーキです」
紗雪が持ってきた料理を前にしたフェルナンド達は満面の笑みを浮かべたり、キツネ色に焼けている唐揚げに生唾を飲み込んでいる。
神よ、あなたの慈しみに感謝いたします
食事前の祈りを捧げた五人は自分が注文した料理を口に運ぶ。
(このホットケーキ、これだけ厚かったら生焼けだと思ってしまいますけど、不思議な事に中までちゃんと火が通っていますわ。どうやって作っているのでしょうか?)
クリスティアナの口に広がるのは柔らかくてふわふわで、口の中で溶けてしまうくらいにきめ細かい生地。
バターの塩気とメープルシロップの甘さ。
鼻から突き抜けるのは皇族や一部の貴族しか口にする事が出来ないショコラという飲み物に入れるバニラの香り。
煮出しコーヒーの苦味と酸味、牛乳のコクとまろやかさが一つになったカフェオレで甘くなった口の中をリセットしたらもう一度甘しょっぱい厚焼きホットケーキを味わえる幸福。
歯が痛くなるレベルというか喉が焼け付くような激甘なデザートに慣れている後宮の者にとっては物足りないと思うかも知れないが、クリスティアナにはこれくらいの甘さが丁度良かった。
(美味しい・・・。この店の厚焼きホットケーキを食べている時だけが冒険者を皇女に戻してくれますわ)
女を捨てたとは言えクリフの心はクリスティアナのままなのだ。
故郷のインペラトーレ帝国など足元には及ばないレベルの高い料理をクリスティアナはしっかりと味わう。
「さてと・・・」
「店長さんが作った美味い飯を食った事だし」
「仕事に向かうか!」
「おぅ!」
(今回の仕事が終わったら、次は生クリームを乗せた厚焼きホットケーキを注文する事にいたしましょう)
カフェ・ユグドラシルの料理を堪能した五人の顔は実に晴れやかだった。
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