カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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58.チーズトースト-4-

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 「この店は俺と同じ日本人が経営していると言っていたけど・・・」

 自分達の注文を聞いた給仕、カウンターの向こうから見える料理人はどこからどう見ても日本人とは程遠い容貌をしている。

 料理人らしき男性が銀髪長身のイケメンだという事実にムッとしながらも、信也はシェリルとエドガーに経営者はどこに居るのかと疑問をぶつける。

 「厨房で料理をしている彼もカフェ・ユグドラシルの経営者の一人だ」

 「いやいやいや、それは違うっしょ!この店は俺と同じ日本人が経営していて、『イケメン滅びてしまえ!』と呪いたくなるあのイケメンはその人が雇っている料理人、或いは料理の腕を見込まれて買われた奴隷って奴じゃねぇの?」

 トリップや召喚───何らかの形で異世界に来た日本人が奴隷購入するというのがお約束である。あのイケメン料理人もそうなのだろうと思った信也はラノベにおけるテンプレを口に出してしまった。

 「・・・シンヤ。今の言葉を経営者・・・つまり彼の奥方や先代ロードクロイツ侯爵夫妻の前で口にしてみろ?」

 「容赦なく精神的攻撃を食らわせた上で社会的に抹殺されるからな」

 「コバルトグリーン家の客人として身を置いているお前が初対面の人間に『貴様は私達の奴隷なのか?』と言われるのは嫌だろ?」

 日本では信也は未成年らしいが、キルシュブリューテ王国から見れば一人前の大人なのだ。

 成人したと見做されている者が軽々しくするなと、シェリルとエドガーが信也に対して殺気の籠った低い声で窘める。

 「シェリルさん、エドガーさん・・・」

 「お待たせしました。ホットサンドのモーニング二つとチーズトーストのモーニングです」

 カフェ・ユグドラシルを経営している日本人について改めて聞こうと血の気が引いた顔で信也が口を開いたその時、キャスリンが三人の注文した料理を持ってきた。

 神よ、あなたの慈しみに感謝いたします

 いただきます

 (この店の経営者は何で『いただきます』を広めなかったんだ?)

 ラノベでは、異世界にトリップしてしまった日本人の主人公がご飯を食べる前に手を合わせて「いただきます」というシーンがある。

 疑問に持って尋ねた異世界人に「いただきます」は、料理を作った料理人に食材を作っている生産者、食材そのものに対する感謝の念を表しているのだと教えると、主人公の言葉に感動した現地人が「いただきます」をするようになるのがセオリーだ。

 (経営者って人に会えた時に聞けばいいかな?)

 食事前の祈りを捧げた後、三人は自分が注文した朝食を口に運ぶ。












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