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58.チーズトースト-3-
しおりを挟むオエ~ッ・・・
(ゲ、ゲームだったら攻撃・防御・アイテムといったコマンドウインドが出てくるのに・・・。ボタンを押しさえすれば後は勝手にやっつけてくれるはずなのに・・・)
信也の目の前に広がるのは緑色の血を流し、シェリルとエドガーによって無残な姿にされてしまった何体ものゴブリンだった生物。
馬車に乗ってロードクロイツに向かっていた自分達を襲った、累々と築かれたゴブリンの死体の山もあるが、風に乗って血の臭いが鼻腔に入ってきた信也は思いっきりリバースしていた。
(ゲームでは雑魚に過ぎない怪物が襲ってきた事に恐怖して何も出来なかった俺が俺tueee!をしたり、ハーレムなんか作れるはずがない!!・・・・・・人を殺しても何とも思わない強い精神というかイキってマウントが取れるサイコパスでないとラノベの主人公になれないんだな~)
基礎体力はない。貧相な体格。膨大な魔力はあっても訓練も実戦経験も積んでいない。
今の自分がいる世界はゲームではない。痛みも空腹も感じる、死と隣り合わせの現実世界なのだ。
死の覚悟もない、メンタルが豆腐な人間ではラノベのように簡単に無双出来ないという事実を突きつけられただけではなく、自分が生き残る為には怪物や魔物の命を奪わなければいけないと事に気が付いた信也は再び盛大なリバースをしていた。
「このままゴブリンの群れの死体を放置していたら、別のゴブリンの群れやヘルハウンドといった怪物が襲ってくる可能性が高いからシェリル、跡形もなく消してくれ」
「ああ、任せとけ」
軍人の家系だからなのか、本人の性格なのか分からないが、攻撃系の魔法が得意なシェリルが繰り出した火の魔法は一瞬にしてゴブリンの死体の山を消してしまった。
(流石、メスゴリラ・・・)
自分とは比べ物にならない威力の魔法を使ったシェリルに信也は心の中で称賛の声を上げる。
「シンヤくん、そろそろお腹が空いてきたんじゃないのか?今からここで軽く昼食を済ませようか?」
「は、はい・・・」
(い、痛ぇ!もしかして俺がシェリルさんの事をメスゴリラって思っているのが分かったからエドガーさんは肩に指を食い込ませているのか!?)
副音声で『これ以上シェリルを悪し様に言ったら・・・どうなるか分かっているだろうな?』と、聖人のような笑みを浮かべているエドガーにそう言われているような気がした信也は無言のまま血の気が引いた顔で何度も頷く。
馬車に戻った三人は食事前の祈りを捧げると、今日の為にコバルトグリーン家の料理人に作って貰った料理を食べ始める。
黄身の部分が固い目玉焼きを乗せたパンとスープで軽く昼食を済ませたら馬車で先に進みつつ、道中で遭遇したスライムやレッドボア、キラーベアーといった怪物を倒す。
そして街灯が灯る都会ではお目にかかれない満天の星を馬車の中で毛布に包まりながら眺めるという形で進んだ翌日
「いらっしゃいませ」
ロードクロイツに着くなりカフェ・ユグドラシルに朝食を食べに来た三人を、ビアホールとかで見かけそうな衣装に身を包んだ二人の給仕が出迎える。
「三人だ。席は空いているか?」
「はい。ご案内しますね」
カフェ・ユグドラシルで女給仕として働いているキャスリンがシェリル達をテーブルに案内する。
「給仕。私はホットサンドのモーニングを頼む」
「私も彼女と同じものを」
「俺は・・・チーズトーストのモーニングをお願いします」
「ホットサンドのモーニング二つとチーズトーストのモーニング一つですね?ご注文、承りました」
シェリル達の注文を聞いたキャスリンはレイモンドが居る厨房へと向かう。
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