カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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58.チーズトースト-2-

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 「異世界と言えば、チート能力で山賊や盗賊やゴブリン等を倒して俺tueee!!!をしたり、襲われているところを助けた猫耳美少女とか女騎士とかお忍びで旅行をしているエルフのお姫様から『信也様~♡お慕いしております~♡♡♡』って言い寄って来る女の子達でハーレムを築くのがお約束だろうが!!!」

 それなのにコバルトグリーン家でやる事と言えば文字の読み書きに一般常識、基礎体力作り、剣術や魔法の理論と使い方といった基本的な事だけなのだ。

 異世界と言えばチート・冒険・ハーレムの三拍子が出来ないという事実もあるが、何と言っても目の前に居るシェリルは女にモテた。しかもそこら辺の男より足元にも及ばないレベルで強いだけではなく教養もあるのだから、年頃の令嬢にモテて当然と言えた。

 「それにしてもシンヤは何時まで経っても弱いな」

 (!!)

 シェリルにしてみれば事実を口にしただけである。だが、それが信也のプライドを傷つけたのだろう。我知らず、信也は禁句の一言を口にしてしまっていた。

 「メスゴリラ」

 「シ~ン~ヤ~?」

 (ひぃぃぃぃぃ!!!)

 信也にしてみれば誰にも聞き取れないような小声で言ったつもりである。

 だが、地獄耳なシェリルにはしっかりと聞こえてしまったのだろう。

 「誰が何ですって?」

 「な、何でもございません!全ては秘書がやった事でございます!!」

 へぇ~っ

 「秘書?シンヤって秘書を雇えるくらいの金持ちになったの?ならば今すぐ訓練場ここに連れて来てくれないかしら?」

 ぎゃあああああ!!!

 シェリルが身に纏っているのは、氷のような殺気と怒りのオーラ。

 端正な顔に浮かべているのは穏やかな笑み。

 そんなシェリルの覇気と、何とかという漫画の主人公が使うプロレス技と主人公の最強の敵である何とか将軍が使うあの技を信也はまともに食らってしまう。

 (うちのかみさん、本当に強いな~。あ~らら、ボロボロになったシンヤくんは血文字でダイイングメッセージを残しちゃっているし・・・)

 「シェリル、お疲れ」

 そんなシェリルを労わるように一人の青年が声を掛ける。

 「エドガー」

 男はシェリルの夫でエドガーといい、元は子爵家の四男で幼馴染みだったのだが真面目で謙虚、しかも親の目から見てもメスゴリラなシェリルに惚れているところを見込まれた現当主に『シェリルむすめの夫になって支えて欲しい』と望まれてコバルトグリーン家に入り婿したのだ。

 「エドガー、どうもシンヤは夢と現実の区別が付いていないようなのだ。お前の知恵で何とか現実を分からせる事が出来ないか?」

 俺tueeeだの、ハーレムだの、チートだのと言っている信也に頭を痛めているシェリルはエドガーに相談した。

 「・・・そうだな。ならば明日の朝一にコバルトグリーン家を発ってカフェ・ユグドラシルに行こうか?」

 「カフェ・ユグドラシルってサユキ殿がレイモンド殿と共に開いている店ではないか!それとシンヤがどう関係するんだ?」

 「だから──・・・」

 ひそひそ

 何かを企んでいる悪代官のような笑みを浮かべたエドガーがシェリルに耳打ちする。

 エドガーの企みを聞いたシェリルは、それはいい考えだと言わんばかりの実に清々しい笑みを浮かべた。

 「おい、シンヤ。明日は異世界人・・・私の友人でお前と同じ日本人が夫婦で経営しているカフェに行く。ゆっくりと休むがいい」

 (俺と同じ日本人が経営しているカフェ?という事は・・・)

 「美味い飯が食える!」

 うぉぉぉぉぉ!!!

 シェリルの一言で意識を取り戻した信也は自分が重傷を負っている事をすっかり忘れてしまい、雄叫びを上げながら自分の部屋へと戻るのだった。













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