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57.オークキングの肉とカボチャ-9-
しおりを挟む土鍋でご飯を炊いている間に作るのは豚汁ならぬオークキングの肉が入った味噌汁。
使う野菜は人参、ジャガイモ、カボチャである。
(本当は大根とゴボウとコンニャクを入れたいのだが・・・)
キルシュブリューテ王国というか近隣諸国ではゴボウをバードッグというハーブとして利用する事はあっても料理に使う事はないし、コンニャクは紗雪のネットショップでないと手に入れる事が出来ないので今回の味噌汁には入れない。
(それに・・・コンニャクは父上達にとって初めての食材だし、何と言ってもあの食感を受け入れてくれるかどうか・・・)
今でこそコンニャクを食べる事が出来るレイモンドであるが当初はスライムのような感触が駄目だったと思い出しながら、コンロに乗せた鍋に適量のゴマ油を入れると薄く食べ易い大きさに切った鮮やかで綺麗なピンク色をしているオークキングの肉を炒める。
(香りのいいゴマ油とオークキングの肉。これで作った豚汁・・・ではなく味噌汁は絶対に美味いはず)
火を通すと綺麗なピンク色をしていたオークキングの肉の色が白へと変わっていった。
その肉が入っている鍋に、いちょう切りにした人参とジャガイモ、シフォンケーキとプリンを作る時に使い残っていたカボチャ。それ等を鍋に入れると更に炒めていく。
ちなみに紗雪はというと、昼寝中のレオルナードがそろそろ目を覚ます頃だからと言ってから向かった寝室でオムツを替えたり、乳を飲ませるといった世話をしていたりする。なので、今日の夕食を作っているのはレイモンドだ。
(粉末昆布を加えて煮込んだ後に味噌を溶かしたら完成だな)
オークキングの肉と野菜が入っている鍋に水、シュルツベルクから届く粉末昆布を入れると中火で煮込んでいく。
火を止めたら仕上げに味噌を溶かす。
「レイモンド、手伝うわ」
レオルナードを抱っこしている紗雪が、味噌汁を盛り付けようとしているレイモンドに声を掛ける。
「いや、後は盛り付けるだけだから紗雪は父上達と一緒に居間で待っていてくれ」
「・・・分かったわ。そうそう。レイモンド、今日の夕食の後にベルンハルトお義兄様に作って欲しい魔道具について話そうと思っていたの」
あ~っ・・・
紗雪の言葉にレイモンドが微妙な声を上げる。
「ベルンハルト兄上であれば作ってくれると思う・・・というより作ってくれるはずだが、あれだけではなく他の魔道具に関してもまずはロードクロイツ家の当主となったグスタフ兄上と義父上と義母上に相談した方がいいだろうな」
それに、レオルナードはまだ赤子。片道一日の王都までの旅に赤子を連れて行く事に不安があった。ベルンハルトには手紙で作って欲しい魔道具の要望だけ伝えて来年の春に王都に行く方がいいだろうとレイモンドが呟く。
「そうした方がいいでしょうね・・・」
作って欲しい魔道具はネットショップで購入出来るので急ぎではないが、それ等を使い続けていたらキルシュブリューテ王国の発展に繋がらないだろうと感じている紗雪はレイモンドの言葉に同意を示す。
「片付けとカボチャプリンの用意は私がするわね」
浅漬けしたキュウリを切っているレイモンドにそう言った紗雪はレオルナードと共にクリストフ達が居る居間へと向かう。
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