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57.オークキングの肉とカボチャ-4-
しおりを挟む「レイモンド。お客様はどなただったの・・・って、お義父様!?お義母様!?クリストフ陛下!?」
突然の来訪者が義父母とダークエルフの長だったという事実に離乳食を冷ましていた紗雪は驚いてしまったが、考えてみればランスロットは自分達が作った異世界の料理を食べる為だけにレイモンドが拠点としている家に来ていたのだ。
これしきの事で驚いてはいけないと我を取り戻した紗雪は三人の為にコーヒーを淹れる。
「先触れを出さず、急に訪れて済まない。じゃが、儂の勘が訴えていたのじゃ!」
近いうちにそなた達は新しい料理を作るのじゃと!!
((す、鋭いっ!))
「勿論、ただで新しい料理を食べようとは思っておらぬ。その対価として、道中でオークの棲み処を見つけて狩ったオークとオークキングの肉を持ってきたのじゃ」
そう言ったクリストフは収納腕輪から部位毎に切り分けたオークとオークキングの肉を取り出したそれをレイモンド達に見せる。
「これは・・・見事な肉ですね。流石はオークキング」
きめが細かいのに締まりが良さそうで、何と言っても綺麗な薄いピンク色をしている赤身の肉。適度についている白い脂肪。
冒険者だった頃は一度だけしかお目にかかれなかったオークキングの肉にレイモンドは思わず感動の声を上げる。
「オークキング?レイモンド、オークキングってオークの一種だというのが何となく分かるのだけど・・・珍しいの?」
「ああ」
詳しい生態はまだ分かっていないところがあると前置きした上で、突然変異で生まれるとも、冒険者や兵士によるオーク狩りから逃れたオークが時を経てオークキングに進化するとも言われている事を紗雪に教える。
「オークキングはオークよりも狡猾で強いが、その肉は美味いんだ。オークの肉が平民でも買える手頃な肉だとすると、オークキングの肉は日本でいうところの高級ブランド肉って奴になるのかな?」
「わ、分かり易い例えをありがとう」
「オークキングはオークと比べて個体数が少ない故にその肉は希少で・・・市場に出る事はないのじゃ」
「そのような肉を分けて下さるなんて・・・ありがとうございます」
カフェ・ユグドラシルで期間限定のメニューとして、カボチャのシフォンケーキとカボチャのプリンを作ろうとしていた事をクリストフ達に話す。
「儂の勘は当たっていたようじゃな」
「プリンは分かるのだけど、シフォンケーキって何なのかしら?」
ケーキという言葉が付いているからスイーツなのだろうという事は何となく分かるのだが、シフォンケーキが想像出来ないエレオノーラは首を傾げる。
「母上。シフォンケーキというのは、ふわっとした軽い食感の製菓用の小麦粉と卵白を使って作るスポンジケーキです」
レイモンドの話を聞いた三人は興味を示す。
「夕食後のデザートにカボチャプリン、明日のデザートにシフォンケーキをお出ししますよ。その前に・・・」
レオルナードに離乳食を食べさせるのが先だと、抱っこしていた息子を赤ちゃん用の椅子に座らせたレイモンドが紗雪の作った離乳食を食べさせようとしたその時───また、来客を告げる呼び鈴が鳴った。
「私が対応するわ」
そう言った紗雪は玄関へと向かう。
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