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56.お子様ランチ-8-
しおりを挟む「母ちゃん、兄ちゃん。お肉が柔らかくて美味しいよ」
「油で揚げたマグロにはお肉のように赤いソースがかかっていないけど・・・塩の味がして後を引くから幾らでも食べたくなるね~」
「母ちゃん、トレーシー。黄色いスープはただ甘いだけじゃなくて塩気も感じるし、俺達が何時も飲んでいるスープと違って何て言うか・・・とにかく美味い!」
「本当だ。母ちゃん、兄ちゃん、スープにパンを浸して食べてみて。美味しいよ」
外側はパリッと中身は絹のようにしっとりと柔らかく、小麦の香りと甘味が感じられるパン。
細かく刻んでから楕円形にした肉は柔らかくてジューシーでありながら肉の歯応えがあり、適度な歯応えがあるマグロの揚げ物。
サラダは野菜が新鮮である事を示すかのように、瑞々しくシャキシャキとしている。
黄色いスープは、とうもろこしだけではなく牛の乳のコクと甘味も感じるからなのか、不思議と心が安らぐ味だった。
「これが、これが・・・」
ハンバーグ、マグロのフライ、パン、サラダを食べてしまった後のプレートに乗っているのはデザートのプリン。
ジェフリーはプリンを甘い香りがして柔らかい食べ物だと言っていたが、ルーク達にとってそれは未知の領域だった。
目の前にあるプリンを三人は生唾を飲みながら見つめる。
「母ちゃん・・・兄ちゃん・・・」
顔を見合わせた三人はスプーンで掬ったプリンを口に運んだ。
口に広がるのはクリーミーで蕩けるような食感に乳のコクと甘さ、そして甘い香りだった。
「お、美味しい~♡」
「こんなに美味しいデザートは初めてだね~」
「美味ぇ!」
アデル親子は夢中になってプリンを食べていく。
「美味しかった~」
賄いを食べ終えた三人の顔は幸せそうな笑みを浮かべながら、お腹を擦っていた。
「に、兄ちゃん。これ・・・兄ちゃんが俺達の為に作ってくれた料理の代金。受け取ってくれ!」
少し休んだ事で落ち着いたルークがレイモンドに三十ブロンズが入っている革袋を差し出す。
「お客様。先程も申しましたが、あれは賄いですので代金を貰う訳にはいきません」
「でも・・・」
三十ブロンズは【お子様ランチ】の為に貯めたものであるが、今日食べた賄いはメニューに加えてもいいくらいに美味しかったので、その対価としてルークは払おうとしただけだ。
決して受け取ろうとしないレイモンドの態度と言葉に、どうすればいいのか分からずルークはオロオロしている。
「それでしたら・・・次にお客様が当店の開店時間内に食べに来た際は、お子様ランチを注文して下さいませんか?」
「・・・・・・そうしたら兄ちゃんは、この三十ブロンズを受け取ってくれるんだな?」
「はい」
「分かった!俺は兄ちゃんに約束する。次はカフェ・ユグドラシルが開いている時に来て、お子様ランチを注文するって!」
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