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55.トマトのパンナコッタ-12-
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「いらっしゃいませ。セバスティアンさん、お久し振りですね。そちらの女性は一体?」
「とぅとぅとぅ」
カフェ・ユグドラシルに来たセバスティアンを出迎えたのは、言うまでもなく紗雪と彼女に負われているレオルナードだ。
「ああ。同族の令嬢と見合いをしていたんだ」
「初めまして、女将殿。私、セバスティアン殿下の婚約者となりましたジゼルと申します。以後、お見知りおきを・・・」
セバスティアンに紹介されたジゼルという女吸血鬼は、スカートを軽く摘まんで紗雪にカーテシーをする。
「私はカフェ・ユグドラシルの女将である紗雪と申します。こちらこそよろしくお願いいたします。それでは、席に案内しますね」
紗雪はセバスティアンとジゼルを空いているテーブルに案内した。
「セバスティアン殿下?この店は簡単に魔族を倒せそうな女将が上位種の混じり者ですのに他種族の客が普通に居ますのね?」
辺りを見渡せば人間のみならずダークエルフにドワーフ、狼女や獣人が普通に料理を食べているものだから、ジゼルはセバスティアンに小声で話し掛ける。
「ジゼル。キルシュブリューテ王国が多種族国家という事もあるが、何と言っても女将が問答無用で魔族を殺そうとする思考の持ち主でない事が大きいだろうな。だから、我等もこうやって食事をする事が出来るのだよ」
「言われてみれば・・・」
どこぞの宗教国家の聖職者のように、紗雪がそのような思考の持ち主であればセバスティアンは女将と顔見知りになる事はなかっただろうし、徐々にではあるがブラッドカリス王国の料理の幅が広がる事はなかっただろう。
「この店が安全だと分かった事で、我々は料理を堪能しようではないか」
「はい」
二人はテーブルに置いている冊子を手にして目を通す。
頼む料理が決まったセバスティアンは紗雪を呼んだ。
「女将、今日は暖かい料理を食べたい気分だからトマトのドリアを頼む。それと食後のデザートはトマトのパンナコッタだ」
「私もセバスティアン殿下と同じ料理をお願いします」
「トマトのドリアと、トマトのパンナコッタを二皿ずつ。ご注文、承りました」
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