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55.トマトのパンナコッタ-6-
しおりを挟む「トマトを使ったデザート・・・か。トマトで作ったアイスクリームにムース、ケーキにパンがあったけど、食べた事も作った事もないからどんな味なのか私には分からないわね」
すやすやと寝息を立てて眠っているレオルナードを抱きながら、レイモンドから相談を受けた紗雪は考え込む。
紗雪にとってトマトは野菜。
スープの具材、サラダの具材、サイドディッシュ、ソースやケチャップといった調味料を作る為の野菜で、お菓子作りに使うイメージがないのだ。
「そういえば、俺もトマトを使ったデザートを作った事がなかったな。・・・・・・紗雪ってトマトが苦手だったりする、のか?」
紗雪から教えて貰った事がなかった事を思い出したレイモンドが尋ねる。
「・・・ええ」
サラダ、モッツァレラチーズと一緒に食べるカプレーゼ、ミネストローネのようなスープであれば食べられるのだが、ハンバーガーやビザのようにパンや生地にケチャップを塗る、生地と具材に薄く切ったトマトを挟むという形では食べられないのだ。
(レオルナードは嫌いな食べ物であっても吐き出さずに飲み込んでくれるのに、母親である紗雪が偏食お化けだったとは・・・)
自分でも偏食が激しい事を自覚しているからなのか、レイモンドの問いに答えた時の紗雪の顔は恥ずかしさで真っ赤になっていた。
「・・・トマトが苦手な紗雪でも食べられるようなデザートを作ってみるかな?」
「あの人達、トマトが苦手ではないから私を基準にしなくてもいいと思うけど?」
「苦手でなくても、デザートとなれば話は別だ。最初は紗雪のように苦手な人が食べられるようにした方がいいのではないかと思う」
そこから様子を見て食べられそうなデザートを作っていけばいいというのがレイモンドの考えだ。
「明日、買い物と試食に付き合ってくれるか?」
「勿論。私でも食べる事が出来るトマトを使ったデザート・・・楽しみだわ」
「紗雪の期待に応えられるものを作るようにする」
そう答えたレイモンドは紗雪と妻の腕に抱かれて眠っている我が子に向けて腕を伸ばすと自分の元に引き寄せる。
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