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54.聖女との対決-7-
しおりを挟む霊や精霊が見えるようになる=精霊使いになる=火や水といった精霊のトップであるサラマンダーやウンディーネという名前を持つ精霊王と契約できた偉大な王(騎士)として名を残せる
そんな図式を思い描いているエドワードとギルバードが紗雪に命令口調で頼む。
(霊とかが見えるようになるだけで簡単に精霊使いになれる訳がないのだけど・・・)
天女の血が色濃く出た紗雪は先天的に膨大な霊力を持っていた。
強大な力を持っている者だからこそ己を律し力を上手く操らなければならないという祖父の教えに従い、紗雪は修行の日々を送った。
結果、巫女でありながら陰陽道と霊剣・蜉蝣を駆使して悪霊や妖怪を消滅させる退魔師になったのだ。
まぁ、天女の血が濃く出てしまったが為に霊剣・蜉蝣の使い手となり【篁の使命】を背負う事になったとも言える。
そう。
単なる庶民でしかない自分ですら力を持つ者の義務と使命という物を理解し、己の運命を受け入れているというのに、王家・貴族家に産まれたエドワードとギルバードがそれを分かっていないとは───。
(最終目的は近藤さんと愉快な仲間達の霊感を無理やり覚醒させて気を狂わせる事だから、その辺りはどうでもいいわね)
これ以上ウィスティリア王国の王宮に居たら自分だけでなく、今回の旅に同行してくれた養父母とロードクロイツ侯爵夫妻、そして友と婚約者の気分を害してしまうので紗雪は手にしている扇子を通じて茉莉花達の額に霊力を流し込んだ。そして、彼等に触れた扇子を汚らわしいと言わんばかりに投げ捨ててしまった。
「これで私の目的は果たせました。お養父様、お養母様、早くシュルツベルクに帰りたい・・・あっ」
踵を返して謁見の間を出て行こうとした紗雪であったが、エドワード王太子殿下とギルバード殿とウィスティリア王国の国王陛下と王妃に一つだけ忠告しなければいけない事があったのを思い出したのでアルバートに少しだけ時間が欲しいと頼んだ。
「それは構わないが?」
「恐れながら国王陛下、王妃殿下、エドワード王太子殿下、ギルバード殿であれば既に存じ上げている事実かと思いますが──・・・」
アルバートから許可を得た紗雪はエドワードとギルバード、そして国王夫妻に告げる。
「実は近藤さん・・・いえ、ウィスティリア王国が正式に認めた聖女ですから聖女様とお呼びしなくてはいけないのでしたわね。実は畏れ多い事に私は聖女様と同じ大学に通っていたのですが、キャンパス内で数多の殿方を侍らせている姿を何度も見掛けしていましたの」
私を含む大学に通う学生達からは親の七光りで自分より可愛い女の子が付き合っている殿方を奪って自分の情夫にして逆ハーレムを作っていましたので、その、言葉にするのも憚られるのですが・・・売女や阿婆擦れを意味する『ヤリマン』『ビッチ』『サセコ』として非常に有名でしたし、高校時代には堕胎した事もありますわ
「だ、堕胎・・・?」
「マリカ!あの異世界人が言っている事は真実、なのですか?!」
「ひ、酷いわ!篁さん!あたしが聖女として崇められているからって、あたしが王妃になる事に嫉妬して出鱈目を並べるなんて!!」
(ここで『篁さんって性格の悪い女ですぅ~』をアピールすれば、イケメンとイケオジはあたしに靡くはず!!)
自分が可愛いから紗雪に虐められている可哀想な女だと言わんばかりに、茉莉花は涙しながらランスロットとアルバート、レイモンドの前でアピールするのだが、彼等は海千山千の貴族を相手にしているのだ。
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