239 / 451
53.近藤 茉莉花という女-1-
しおりを挟む茉莉花は近藤 勇造という、一代で日本を代表するIT企業を築いた男の一人娘として生を受けた。
年を取ってから出来たという事もあるが、何より可愛い顔立ちをしているものだから勇造は茉莉花が望む物は何でも与え、そして叶えた。
結果、茉莉花は傲慢で何でも自分の思い通りにしなければ気が済まない我が儘娘になってしまう。
そんな茉莉花の名前を紗雪が初めて耳にしたのは、大学に入学してから数ヶ月後の事だ。
その日の紗雪は自分と同じ講義を取っている親友の大谷 真由美と江藤 涼香は食堂で昼食を摂っており、夏休みのバイトについて盛り上がっていた。
『紗雪、涼香。夏休みは旅館でバイトするっていうのはどうかな?』
日替わりランチ(豚肉のチリソース・ポテトサラダ・ご飯・味噌汁)を食べ終えた真由美が紗雪と涼香に話しかける。
『バイト?短期間のバイトを募集している旅館があるの?』
『それがあるんだな』
そう言った真由美がスマホの画面を見せる。
『旅館の制服は着物。男は和服姿の女に弱い。という事は簡単にイケメンの彼氏が出来る!』
『和服姿になっただけで彼氏が出来る程、世間は甘くないよ?けど、着物で働く仲居さんってカッコいいから子供の頃から憧れているんだよね~。仲居さんが出来るなら旅館でバイトしてみたい!』
『彼氏を作る事に興味はないけど、旅館のバイトは接客と会話のスキルが上がると思うからやってみたいわね』
『よし決まり!早速、電話を・・・ねぇ、あれって近藤さんだよね?昨日は確か足立君と池上君、それから野村君でハーレムを築いていたのに』
旅館に電話を入れようとしていた真由美だったが、取り巻きと言えばいいのか、金目当てで付き合っていると言えばいいのか、数人の男子と共に食堂にやってきた茉莉花に気付く。
『相変わらずお盛んだね~。流石【ヤリマン】【サセコ】【ビッチ】と言われるだけの事はあるわ。お盛んと言えばさ、実は近藤さんって・・・』
紗雪と真由美に涼香が周囲に聞こえないような小声で、ある事実を教える。
二年前、当時高校生だった茉莉花が産婦人科に入っているところを自分が目撃した事
霊感の強い友人曰く、彼女の腰の辺りに赤子が抱き着いているのが視えている事
『それってもしかしてさ・・・』
『・・・・・・・・・・・・』
『それを知った上で近藤さんの取り巻きになれる男共の・・・というより、金と親の力は偉大で平伏すしかないと改めて実感するわね~』
茉莉花が中絶していたという事実に、この話をした涼香だけではなく紗雪と真由美は思わずドン引きするしかないのだった。
※夏休みに紗雪達は旅館でバイトをするのですが、リゾートバイトのようなホラーを体験します
1
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる