カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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53.近藤 茉莉花という女-1-

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 茉莉花は近藤 勇造という、一代で日本を代表するIT企業を築いた男の一人娘として生を受けた。

 年を取ってから出来たという事もあるが、何より可愛い顔立ちをしているものだから勇造は茉莉花が望む物は何でも与え、そして叶えた。

 結果、茉莉花は傲慢で何でも自分の思い通りにしなければ気が済まない我が儘娘になってしまう。

 そんな茉莉花の名前を紗雪が初めて耳にしたのは、大学に入学してから数ヶ月後の事だ。

 その日の紗雪は自分と同じ講義を取っている親友の大谷 真由美と江藤 涼香は食堂で昼食を摂っており、夏休みのバイトについて盛り上がっていた。

 『紗雪、涼香。夏休みは旅館でバイトするっていうのはどうかな?』

 日替わりランチ(豚肉のチリソース・ポテトサラダ・ご飯・味噌汁)を食べ終えた真由美が紗雪と涼香に話しかける。

 『バイト?短期間のバイトを募集している旅館があるの?』

 『それがあるんだな』

 そう言った真由美がスマホの画面を見せる。

 『旅館の制服は着物。男は和服姿の女に弱い。という事は簡単にイケメンの彼氏が出来る!』

 『和服姿になっただけで彼氏が出来る程、世間は甘くないよ?けど、着物で働く仲居さんってカッコいいから子供の頃から憧れているんだよね~。仲居さんが出来るなら旅館でバイトしてみたい!』

 『彼氏を作る事に興味はないけど、旅館のバイトは接客と会話のスキルが上がると思うからやってみたいわね』

 『よし決まり!早速、電話を・・・ねぇ、あれって近藤さんだよね?昨日は確か足立君と池上君、それから野村君でハーレムを築いていたのに』

 旅館に電話を入れようとしていた真由美だったが、取り巻きと言えばいいのか、金目当てで付き合っていると言えばいいのか、数人の男子と共に食堂にやってきた茉莉花に気付く。

 『相変わらずお盛んだね~。流石【ヤリマン】【サセコ】【ビッチ】と言われるだけの事はあるわ。お盛んと言えばさ、実は近藤さんって・・・』

 紗雪と真由美に涼香が周囲に聞こえないような小声で、ある事実を教える。

 二年前、当時高校生だった茉莉花が産婦人科に入っているところを自分が目撃した事

 霊感の強い友人曰く、彼女の腰の辺りに赤子が抱き着いているのが視えている事

 『それってもしかしてさ・・・』

 『・・・・・・・・・・・・』

 『それを知った上で近藤さんの取り巻きになれる男共の・・・というより、金と親の力は偉大で平伏すしかないと改めて実感するわね~』

 茉莉花が中絶していたという事実に、この話をした涼香だけではなく紗雪と真由美は思わずドン引きするしかないのだった。









※夏休みに紗雪達は旅館でバイトをするのですが、リゾートバイトのようなホラーを体験します







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