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52.聖女からの宣戦布告(後編)-2-
しおりを挟む侍従に案内されるまま客室へと向かう紗雪一行。
「陛下、客人をお連れいたしました」
扉をノックした侍従が、紗雪達が来た事を告げるとディートヘルムが客室へと通すようにと命じる。
ソファーにはディートヘルムと王妃であるセラフィーナ、そしてクールビューティーという言葉が似合うイケメンが穏やかな笑みを浮かべて腰を下ろしていた。
イケメンの正体はディートヘルムとセラフィーナの息子にしてキルシュブリューテ王国の王太子であるエセルバートだ。
(魔王な陛下の息子は美形というのがお約束なのかしら?)
大魔王な威厳とオーラを纏っているクリストフの息子であるセドリックもイケボのイケメンであった事を思い出した紗雪は、心の中でツッコミを入れていた。
「ロードクロイツ卿、ロードクロイツ侯爵夫人、シュルツベルク卿。シュルツベルク伯爵夫人、よくぞ来てくれた!・・・・・・ところで一つ聞いても良いか?」
(魔王な陛下よりも魔王らしい・・・もうね、何て言えばいいの?どこからどう見ても大魔王と呼んでもおかしくないあの御仁は一体・・・?)
それぞれの領地に先触れを送ってから最低でも七日は経たないと、アルバート達と顔を合わせる事が出来ないと思っていたディートヘルムとディビッド。
何故、紗雪達が四日で王都まで来る事が出来たのかと言うと、クリストフのゴーレムを使ったからである。
余談ではあるが、陸路と海路の旅を経験した事はあるが空路の旅は今回が初めてというレイモンド、ランスロット夫妻、アルバート夫妻。
旅の間中、彼等の顔は蒼褪めており到着した王都の大地を踏みしめた時『い、生きているって素晴らしいっ!!!』と、肩を寄せ合って感動の涙を流したのは内緒だ。
それなのに当事者である紗雪達が半分の日数で王宮を訪れただけではなく、彼等の傍に二メートル越えのダークエルフが居るのだからディートヘルムは彼が何者なのかと尋ねる。
「儂はプルメリア島を治めるクリストフ。こうして貴国と交易出来るようになった事と、ディートヘルム陛下と顔合わせが出来た事を光栄に思う」
「余はキルシュブリューテ王国の国王・ディートヘルムである」
大魔王なダークエルフの名前を知ったディートヘルムはプルメリア島と交流を持つ事が出来た事と、こうしてクリストフと顔を合わせる事が出来て光栄だと握手を交わす。
((((魔王と大魔王が顔合わせをした事で客室が魔界と化してるーーーっ!!!))))
ディートヘルムとクリストフがその場にいるだけで魔界と化してしまったものだから、ランスロット夫妻とアルバート夫妻が心の中でツッコミを入れる。
「陛下、本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「そ、そうであったな」
「ウィスティリア王国の聖女とやらがサユキ嬢の身柄を引き渡した上で、商業ギルドに登録した商品の名義を自分に変更するように要求していると聞いた」
事の次第によっては友を護る為に邪神・サマエルを倒した聖女との戦いも辞さないと言わんばかりに、大胆で挑戦的な笑みを浮かべたクリストフがディートヘルムに先を促す。
※紗雪は学校行事である修学旅行で飛行機に乗った事を除けば天女の羽衣を纏った状態と式神である四神及び龍神に乗っての空中戦、クリストフはゴーレムに乗って空の旅をした事があるのでレイモンド達のように感動の涙を流していません。
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