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51.聖女からの宣戦布告-3-
しおりを挟む(ふむ?昼食のパン・・・何時もより柔らかい?)
今の自分が食べているパンがスープに浸さなくてもいいくらいに柔らかかったものだから王妃は首を傾げる。
彼女が口にするパンは小麦粉で作っているから白いのだが、発酵が足りないからなのか噛み応えがあるのだ。
それなのに昼食用として出されたパンは綿のように柔らかく絹のように滑らかな食感をしている。
(・・・・・・作り方を変えたのか?)
そんな疑問を抱いた王妃であったが、今は空腹を満たす事が先だ。
強烈な刺激があってボリュームのある肉を食べた後、口直しの意味で口にしたスープもまた香辛料を多く使っているからなのかスパイシーである。
相変わらず多くの香辛料を使ったスパイシーで、味に変化がないメニューだが聖女で頭を悩ませている今の王妃にとって料理だけが癒しであり楽しみだった。
あぁ・・・
「砂糖と蜂蜜の濃厚な甘さが私に疲れた心に安らぎを与えるかのように染み込んでいくではないか・・・」
食後のデザートである喉が焼け付くように甘いと言えばいいのか、歯が痛くなるように甘いと言えばいいのか───とにかく甘いパンプディングを口にした王妃の顔は幸せそうな笑みが浮かんでいる。
全てを綺麗に平らげた王妃が皿を引き下げさせる為、呼び鈴を鳴らすと侍女がやって来た。
「今日のパン、とても柔らかかった。何故、そうなのかそなたは理由を知っているか?」
「いえ。ただ、私が聞いた話によりますと、料理長が商業ギルドでパンを柔らかく焼く為の液体である酵母というもののレシピを購入したとか・・・」
王妃付きの侍女ともなれば、それなりの身分の家に産まれた令嬢だ。
貴族令嬢としての礼儀作法は身に付けていても、料理の作り方を詳しく知らない彼女は王妃の問いに自信なさそうに答える。
「・・・そうか。だが、酵母のレシピを商業ギルドに登録できたという事はさぞかし優れた料理人なのであろうな」
その者を王宮専属の料理人として迎えたい。身辺調査した上で王宮に呼び寄せてくれないか?
生家が貧しかったら家族揃って王都に屋敷を与えて住まわせればいいだけの事だ。
「畏まりました」
王妃の言葉に侍女は頭を下げると、キッチンワゴンをして部屋を出て行く。
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