カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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51.聖女からの宣戦布告-1-

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 話はレイモンドと紗雪が屋台・ユグドラシルで茶巾絞りを売っていた頃に遡る。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 自分は救国の英雄にして、慈悲深く純粋無垢な心を持つ聖女なのだ。





 他人が自分より上等な物を持っているのは許さない

 他人が自分より優れているのは許さない

 他人が自分に平伏すのは世の理





 一代で国内でも十指に入るくらいの企業へと成長させた男の社長令嬢として育った茉莉花は、自分以外の人間は踏み台であり使い潰してもいい駒。

 他人は自分を褒め称え、粉骨砕身で仕えるのは当然という考えを持っている。

 その考えは召喚された異世界でも変わる事はなく、寧ろラノベに出てくるチートヒロインのように全属性の魔法を使えるようになった事で拍車がかかっていた。

 そんな茉莉花だから自分付きとなった侍女を奴隷やサンドバッグとして扱うのは至極当たり前の事。

 国を救った英雄であるとはいえ、茉莉花に仕えるのは嫌だと侍女達が必死の形相で、時には彼女に傷つけられた箇所を晒して女官長に訴える。

 「何と頭の痛い娘だこと・・・」

 聖女として、未来の王太子妃として王宮に滞在するようになってからというもの、女官長から侍女が茉莉花から虐待を受ける話を聞くようになってしまった小太りというかぽっちゃり体型の中年女性───王妃は今日だけで何度目になるのか分からない溜め息を漏らす。

 「過去の迷い人や召喚された、召喚に巻き込まれた日本人は謙虚であると聞いた事があるけど・・・」

 茉莉花に関しては謙虚という言葉から程遠い。

 我が儘で癇癪持ちであるだけではなく自己主張が激しい性格をしているように思える。

 「いえ。あれは自己主張ではなく・・・躾のなっていない獣そのものではないか!!!」

 王妃はある貴族令嬢を思い出す。

 「今頃、あの子はシーラ嬢を妃に迎えていたはずなのに・・・」

 気品、立ち居振る舞い、教養、美貌を兼ね備えているシーラは王太子に相応しい公爵令嬢だった。

 我が子が王者の器を持っていないと見抜いていたからこそ、王妃はエドワードを支える伴侶としてシーラを選んだのだ。

 優秀と名高いシーラ、彼女の次に王太子妃として選んだスカーレットと婚約破棄してまで、エドワードは有力貴族の令嬢から評判の悪い人面獣心な茉莉花を選んだのだろうか?

 過ぎた事を嘆いても仕方がない。

 救国の英雄と称えられているものの、侍女として王宮に勤めている貴族令嬢から性格の悪さが伝わった事で教会はおろか男爵でさえも後見を拒む異世界の娘を王太子妃にするべく、王妃は自分と年が近い高位貴族の夫人に教育係を頼んだのだが、茉莉花の我が儘と言えばいいのだろうか。













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