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㊾米粉のパン-6-
しおりを挟む「まさかお米で作ったパンを食べる日が来るなんて夢にも思わなかったわ・・・」
小麦粉で作ったパンとは違う風味を感じている美奈子が、今の日本は進んでいるのね~と呟きながら、レイモンドが作ったパンを口にしていた。
「儂に至っては米でパンを作れるなど夢にも思っていなかったわ」
パンは小麦粉やライ麦で作るものだという思い込みがあったクリストフもまた美奈子と似たような事を思いながら、バターを塗ったり、スープに浸す事で異なる食感を見せる米粉パンを楽しんでいた。
「こうして米で作ったパンを食べる事が出来るのは、サユキ嬢のおかげだな・・・」
塩と胡椒で味付けしただけだが、シンプルだからこそ肉の旨味と風味感じる事が出来るオーク肉のステーキと、野菜の甘味と旨味が溶け込んだポタージュ。
クリストフにとっては異国情緒を、美奈子にとってはどこか懐かしさを感じさせる、ロードクロイツ一家にとっては普通に食べる事が出来るようになった夕食を堪能する。
夕食の皿を引き上げた後、給仕達が食後のデザートとしてカステラを土台にしたアイスクリームを置いていく。
「アイスクリームとカステラを一緒に食べる事が出来るなんて・・・贅沢だわ~♡」
アイスクリームの冷たさとカステラのもっちりとした食感が一つになった、どことなくケーキに似ている甘くて冷たいデザートにエレオノーラの顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「カステラと一緒に食べるアイスクリームは、クッキーを混ぜたアイスクリームとは違った趣があっていいですね」
アイスクリームは美味しい。
美味しいは正義だと言わんばかりに、グスタフだけではなくクリストフ達もまた紗雪が作ったデザートを堪能していた。
「今日のデザートを見て思い出したのだけど・・・アイスクリームケーキがあったわね」
ケーキのようなホール型のアイスクリームを、誕生日やクリスマスといった特別な日にだけ食べていた思い出を美奈子が語り始める。
「異世界には面白いと言えばいいのか、楽しいと言えばいいのか・・・斯様なアイスクリームがあるのだな」
「それだけではありませんのよ」
餅に似た薄い生地で餡子を包んだ大福という菓子に似たアイスクリームもあるのだと、美奈子がクリストフに教える。
「幸いな事にクリストフ陛下が治めるプルメリア島は稲作が中心のようですので、アイスクリームの大福と言えばよろしいのでしょうか?作れると思いますよ」
「私・・・アイスクリームのダイフクを食べてみたいですわ!!」
アイスクリームに目がないエレオノーラが声を上げる。
「レイモンド殿とサユキ嬢に頼めば作って貰えるだろうか?」
「クリストフ陛下。まずはレイモンド殿とサユキ嬢に話を通す事が先です」
グスタフが給仕の一人にレイモンドと紗雪に『話があるので今すぐ食堂に来て欲しい』と伝言を頼む。
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