カフェ・ユグドラシル

㊾米粉のパン-2-

 「カステラは製パン用の小麦粉で作った事があるけど、米粉で作るのは初めてなのよね･･･」

 （料理のレパートリーが増えるからいいか･･･）

 「紗雪、聞いてもいいか？小麦粉と米粉はどう違うのだ？」

　傍から見れば小麦粉と米粉は白い粉だ。

　見分けがつかないレイモンドは紗雪に尋ねる。

 「･･･そうね。小麦粉と米粉の最大の違いはグルテン･･･水を加えて捏ねた時に粘り気と弾力が出るかどうかくらいしか分からないわ」

　幼い頃から小麦粉で作ったパンやパスタを食べてきただけではなく生地までも作るようになったレイモンドは、紗雪の説明で何となくだがイメージを掴む。

 「では、米粉と水ではグルテンが出ないという事でいいのか？」

 「･･････多分、そうではないのかしら？」

　日本にいた頃は米粉で料理を作った事がない紗雪は自信なさそうに答える。

 「後は軽い食感になるといったところか。それだけ分かれば十分だ」

　米粉で作ったクッキーとラングドシャの食感が製菓用の小麦粉で作った菓子と比べたら軽かった事を思い出したレイモンドが小声で呟く。

　カステラはエレオノーラが主催するお茶会の為に製パン用の小麦粉で作った事があるし、必要な材料も知っているので問題はない。

　敢えて異なる点を挙げるとすれば、製パン用の小麦粉が米粉になるくらいか。

　料理人達にカステラ作りを頼んだレイモンドは紗雪と共にパン作りに取り掛かる。